吉祥天女

1983年初出 吉田秋生
小学館フラワーコミックス 全4巻

吉田秋生の作風からするとこりゃ異色作では?と思うんですが、なぜか世間的な評価は高く、ドラマ化、映画化されてたりしますね。

山林王の孫娘として特殊な環境に生まれた主人公小夜子が、彼女の相続する財産と地位に群がる男どもを知略と美貌でかどわかし、一人一人陥れていく、というサスペンスタッチのスリラーなんですが、なぜこれを80年代の今描く?と当時私は思った。

こういうのは松本清張にでも任しておきゃあいいじゃないかよ、と。

小夜子は魔性の女、みたいな描き方がされてるんですが、これもねえ、なんだか70年代的で。

また、物語の指向性として、ホラーにしたかったのか、ドロドロのサスペンスにしたかったのか最後までどっちつかずなのが、ストーリーをどんどん現実離れさせていってて。

エンディングなんてどう考えてもこりゃ都合良すぎるだろう、と。

普通これだけの事件が連続してあったら小夜子は普段通りに暮らしてなんていれません。

ましてや友人とこれまで通り談笑なんてあり得ないと思う。

読了して、だから結局なにを描きたかったんだ?と首をかしげる私。

「吉祥天(弁財天)を現代に蘇らせる」みたいな、伝奇スリラー的試みをしたかったのかもしれませんが、作者がやるならミステリアスな部分に重きを置くのではなく、至極現実的に強い女をキャラ立てしたほうが良かったように思いますね。

それでこそ持ち味が活きる気がします。

この題材ならおそらく山岸凉子にでもやらしたほうが、遥かに背筋の凍る一作になっていたのでは?

なにか新しいことに挑戦してみたかったのかもしれませんが、個人的には失敗作だと思いますね。

適性と素材が噛み合ってないように感じました。

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