荒野の蒸気娘

2006年初出 あさりよしとお
ワニブックスガムコミックス 全4巻

フランクリードシリーズに「荒野の蒸気男」ってのがあるらしいんですが、この作品がそのパロディなのかオマージュなのか未読なもので皆目見当がつかず。

単にタイトルをもじってるだけかもしれません。

少女の心を持ったスチームパンクな高機能ロボットアリスと、そのロボットに慕われるお兄ちゃん(他人)の珍道中をコミカルに描いたSFコメディなんですが、全4巻という短さながらこれが意外に隠れた秀作。

一時期盛りあがってた妹萌えをあざ笑うかのような皮肉満開な設定と展開に、あたしゃ序盤から大爆笑させられました。

鉄人28号みたいな外観のロボットが少女のように振る舞う、と言うだけで、すでにもうおかしいんですが、やっぱりギャップのつけかたがうまいんですよね。

まさに漫画というメディアならではのトリッキーさ。

 笑いが地雷のようにまきちらかされてます。

 特に魔法少女になる回なんて抱腹絶倒。

アリス自体に秘密があり、シリアスなエンディングを予感させる謎も物語は孕んでいるんですが、残念ながらそちらはいつの間にかうやむやに。

特にラストは失敗だったように思います。

このラストが暗示するのは、異形に情けをかけるとさらなる悪夢につきまとわれる事になる、というある種のホラーのような警告でしかないと思いますし。

ちょっとそぐわない感じです。 

でもだからといって読まずに捨て置くにはあまりにもったいない。

作者らしいプロットの秀逸さとすべり知らずのギャグが光る一作。

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