それがし乞食にあらず

1970~71年初出 平田弘史
青林工藝舎

<収録短編>
我れ枯るるとも
それがし乞食にあらず
仕末妻
秘砲抱え大筒
不承知槍
誰も戦い望まぬけれど

サンデー毎日等に掲載された短編を集めた作品集。

これがもう何事か、と言いたくなるほど読み応え充分の作品ぞろいでどれをとってもその内容の濃さに唸らされることしきり。

やはり一番印象に残るのは、下級武士の死を賭けた鉄の意思を描いた「それがし乞食にあらず」ですが、ほとんど笑いと紙一重ではと思われる怪作「仕末妻」もその奇想のとんでもなさにあっけにとられます。

なんかもう熱量が段違いなんですね。

たった20~30ページほどの短編なのに、単行本一冊分ぐらいの密度、重厚さがあるとでもいいますか。

絵の迫力、書き文字ひとつとっても多くの漫画家と同じ様式でコマを埋めているとは思えない圧力がある。

とてもじゃないがドラマ化とかは不可能だろうな、と思える残虐性もいとわぬ物語性は初期から変わらず剛直で、まさに作者ならではなんですが、絵の緻密さが増し、作画スタイルが安定してきたことがこの作品集のもうひとつの魅力でしょうか。

見開きのみならず、これだけの絵を漫画でさらっと読んじゃっていいのか、と私は思いましたね。

床の間に飾っていいレベル。

多分見るたびに背筋がしゃんとすると思う。

時代劇漫画というジャンルを超えたひとつの巨大な才能の産物だと思います。

偏見抜きに多くの人に読んで欲しい、とつくづく思います。

コメント

  1. […] 平田節の冴え渡る短編集ではありますが、さすがに「血だるま剣法」や「それがし乞食にあらず」ほどのインパクトを残す作品はなし。 […]

  2. […] 世紀の怪作「始末妻」にも通づるものあり。 […]

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