グッドナイト・マミー

オーストリア 2014
監督、脚本 ヴェロニカ・フランツ、セブリン・フィアラ

グッドナイト・マミー

なんかとんでもなく禍々しいホラーなのでは・・と思って見ると、微妙に肩透かしを食らうかもしれません。

私の感覚ではホラーというより、サイコスリラーとか心理サスペンスとか、そっちの系統の作品であるように思えました。

とりあえず人外の存在とか、超常的な現象等、一切なし。

おおむね至極地味に、あたりまえの日常が淡々と描写されていくだけ、なんですね。

ともすればヨーロッパの新進気鋭の監督がメガホンを握った単館系の映画でも見てるような気にさせられたりも。

基本、怖がらせよう、としてないんです。

その代わりに監督が少しづつ積み上げていったのは、日常の小さなささくれ。

それが見進めていくにつれ、どんどん肥大していって、得体の知れない気味悪さに成長するんですね。

過剰な説明を一切廃したシナリオも不穏さを醸造する上で貢献。

とにかく先が読めない。

なにがどうなるのか、なにが起ころうとしているのか、さっぱりわからない。

終わってみれば、実に単純なストーリーだったことに気づくんですが、それをここまで狂気に満ちた忌まわしさで彩った監督の手腕は非凡な巧さがあった、と言わざるを得ないでしょうね。

ただ、この作品、非常に後味が悪いです。

なんの救いもなし。

見終わって鉛を呑んだような気分になります。

私はミヒャエル・ハネケの作品を思い出したりなんかもしました。

真相を知ったあとで振り返るなら、終盤の展開なんてただただ痛々しいの一言。

記憶に残る作品だとは思いますが、私はもう一度見ることは多分ないでしょうね。

ちなみに予告編で煽られてた奇怪なシーンの数々は、なんらストーリーの骨子に触れるものではないのでご注意を。

というか、むしろ内容を誤解しかねない。

別にあんなシーンは必要なかったのでは、という気もしなくはありません。

さあこれからたっぷり怖がってもらいますよ、と手ぐすねをひく定型のアメリカンホラーにうんざりしてる人にとっては目先をくらまされる斬新な一本かもしれません。

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