カンパニー・マン

アメリカ 2002
監督 ヴィンチェンゾ・ナタリ
脚本 ブライアン・キング

カンパニー・マン

なんせCUBEの次の作品なんで、さぞや肩の荷は重かったことだろうな、と思われますが、監督なりによくがんばった方なんじゃないか、と私は思っていたりします。

M・ナイト・シャマランあたりもそうかと思うんですが、最初にああいう作品を撮っちゃうとやはりどうしてもレッテルを貼られちゃう。

さしずめナタリだと不条理スリラーですよね。

かといって似たようなものを似たような舞台、設定で料理したところで口うるさい批評家やファンに酷評されることは目に見えている。

全く別の題材に挑戦したことは賢明だった、と思います。

それが期待に答えるものであったかどうかは別にして。

とりあえず、近未来の産業スパイを主人公にしたサスペンス、という意外性はモノクロームな質感の薄暗い映像美に支えられて独特の世界観を構築していた、とは思うんです。

いったい何が真実で、主人公はどうなるのか、先の予測できない展開もスリリングだといえるでしょう。

ただですね、肝心の近未来世界がですね、どういう背景を持ち、どう現在と違うのか、そこに全く言及されていないことがどうしてもストーリーを薄っぺらく感じさせてしまう。

そもそもなんで産業スパイごときが、殺されそうになっちゃうのか。

司法はどうなってるのか。

警察は?

組織ぐるみの巨大な犯罪がなぜ野放図に放置されてるのか。

全く見えてこないんですね。

ですんでシナリオはシリアスだが、印象はファンタジック、という奇妙な印象を与えてしまう。

どこか冷めた目線があったせいか、地下金庫の入り口が登場するシーンや、リタが救出に駆けつけるシーンも私は妙にチープに感じてしまいました。 

オチにはあっ、と言わされます。

それが救いといえば救いなんですが、なんとなく予測できた、という側面もあって。

一番驚かされたのは、終わってみれば実はSFハードボイルドだった、という物語の本質なんですが、それならヒロインにルーシー・リューはないだろう、と私は疑問に思えてきたり。

ミスキャストでしょう、どう考えても。

野心作だとは思います。

CUBEで完成させたものを一度解体にかかった、ともいえると思う。

でも色々と不手際がある。

嫌いじゃなんですが、これではCUBEの呪縛は解かれないぞ、と思った一作でしたね。

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