地獄小僧

1976年初出 日野日出志
ひばり書房ヒットコミックス

事故で最愛の息子を失った病院長が悲しみのあまり他人の子供を犠牲にして我が子を甦らそうとするが、甦った我が子はとても人間とは呼べぬ化け物であった、というどこかで読んだことのあるような内容の怪奇ホラー。

とりあえず本作、前半はもうデタラメ。

違法なまじないで甦った息子の脳を入れ替えようとするわ、いやこれは先祖から続くたたりなのだ、などと言い出したりするわでオカルトと医学が異種格闘技状態でカオス化、試合不成立。 

肝心の主人公地獄小僧が登場するのは物語中盤から。

ここまでひっぱる必要があったのか?と思えるあまりに遅い展開だったりするんですが、地獄小僧が登場してから物語はがらりと様相を変え、異形であるが故に世間から受け入れられずさまよい続ける悲哀を描くストーリーとなります。

どこへ行こうとしてるのだ、この物語は、と混乱させられるんですが、さらに仰天なのはエンディング。

詳しくは書けませんが、これ、どう考えてもオープニングじゃないかと。

完全にここから始まろうとしてるじゃないか、と。

間違いなくシナリオ構成、しくじってます。

思いつくままに描きすすめていったのでは、と勘ぐりたくなるほど。

おもしろくなるとしたらエンディングからその先の展開だと思うんですが、続編が描かれた形跡はなし。

結局、地獄小僧というキャラを産み出してしまった時点で、後はもう「救い」を描くか「絶望」を描くかの二者択一しかないわけで、まあそれを放棄してしまったと言うことなんだろうなあ、と思ったりもします。

巻を重ねていたら猫目小僧になれた、と思うんですけどね、それはそれで日野日出志の作風には合わなかったかもしれません。

カルト的人気のある作品ですが、怪奇と耽美にこだわった同時期の諸作と比較すると完成度は低い、と言わざるをえません。

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