マーズ

1976年初出 横山光輝
秋田書店少年チャンピオンコミックス 全5巻

ある一定の年代の人はマーズというと「六神合体~♪」を思い出すことでしょうが、本作、アニメとはほぼ別物、と考えていいと思います。

そもそもアニメの方は著者の許諾を得て、大きく設定、ストーリーとも改変されたものらしいんですね。

こちらの方にもロボットは出てくるんですが、六神合体どころかロプロスとかポセイドン系の旧態依然としたデザイン。

ストーリーも単純です。

簡単に言ってしまえば、人類の監視役として宇宙人が太古、地球に残した人工生命体の「内輪もめ」を描いた内容。

かたや人類を全滅させるべき、かたやそれは非情すぎる、と世界を巻き込んでロボット大戦。

なんとなく手塚先生っぽいプロットでもあります。

完全に失敗してるな、と思ったのは設定をガチガチに固めすぎてしまってること。

主人公マーズが死んでも地球爆発、負けても地球爆発、なんてしちゃったものだから、なにかとストーリーが硬直気味で、展開に意外性がない。

まあ序盤で負けたり死んだりするはずないだろうし、と予測できてしまうんですよね。 

正直終盤に至るまでは退屈でした。

評価できる部分もあまりないように思います。 

なのに、なぜ、この作品が時代を超えて版を重ね、多くの人の口の端にのぼるのか、それはやはりその衝撃的なラストゆえ、でしょう。

とりあえずいいのか、少年誌で、という驚きはあった。

絶対的に救いなし。

さてこれは作者の怨念なのか、それとも痛烈なアイロニーなのか、熱心な横山読者ではないのでわからないんですが、この突き放し方はもう永井豪クラス。

いい大人が呆然とさせられました。

ただ、穿った見方をするなら、強引に終わらせただけ、どうしようもなくて投げてしまった、という気がしないわけでもないんです。

だってこの茫然自失のエンディングがたった2ページの描写で済んじゃってるんですよ。

2ページで片付けられるようなラストシーンではないだろうと。

読者を奈落に突き落とすにもほどがある。

なんとも評価の難しい作品。

計算ずくだとしたらちょっと杜撰だし、いきあたりばったりなのだとしたらやりすぎな気もする。

作品のクオリティとは別に、こういうシリアスさ、手厳しさをも描ける漫画家だと思っていなかったので、妙に記憶に残った、というのはあるんですけどね。

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