ロスト・イン・ラ・マンチャ

アメリカ/イギリス 2001
監督、脚本 キース・フルトン、ルイス・ペペ

ロスト・イン・ラ・マンチャ

テリーギリアムがラスベガスをやっつけろの後、撮影に入るはずだったThe Man Who Killed Don Quixote(ドン・キホーテを殺した男)のメイキングを撮影したドキュメンタリー。

さて、ファンならご存知かと思いますが、この「ドンキホーテを殺した男」は劇場公開されてません。

というか、完成にすら至らなかった。

つまりこのドキュメンタリーは、何故ギリアムは50億近い資金を投入して制作に挑んだ「ドンキホーテを殺した男」を完成させられなかったのか、を赤裸々に描いた作品となっているわけです。

いやもう、なんといいますか、映画製作ってなんて大変なんだろう、とその一言に尽きますね。

ここまで危ういバランスの上に成り立つ団体競技だったとは、と目を見開かされる思いでした。

もちろんそこには衣装にまで口を出す完璧主義なギリアムの性格が影響を及ぼしている、という見方も出来るんでしょうが、それにしてもこうもついてないことがありうるのだろうか、と私は思いましたね。

まず撮影日ギリギリまでヒロインのヴァネッサ・パラディと連絡が取れない。

やっとどうにか撮影を始められた、と思いきや、中世のドラマなのに上空にジェット戦闘機が行き交う。

再開したのも束の間、今度はゲリラ豪雨。

川と化した砂漠で流されていく機材。

機材の保障で保険会社ともめるも、それ以前に雨で背景の山の色が変わってしまい、別のロケ地を探す羽目に。

主演のジャン・ロシュフォールが椎間板ヘルニアで突如の帰国。

再開のめどが立たぬまま、ただかさんでいく費用にプロデューサーは激怒。

もう、ギリアムが可哀想過ぎて言葉もありません。

本人の絵コンテを見る限りでは滅茶苦茶面白そうなんですよ、この作品。

それこそ私が大好きなバロンの再来とでもいうか。

ドキュメンタリーの最後で、ギリアムは再び撮影するためシナリオを買い戻そうと動いている、とテロップが流れるんですが、発表されずにほかの作品を撮ってるところをみるとだめだったんでしょうね。

ギリアムのキャリアももう長くはないと思うんで、最後にこれを実現させてあげたい、と私は思ったりしましたがご本人はどうなんでしょうね、もう自分の中では消化済みなんでしょうか。

映画好きなら見て損はない一本。

余談ですがギリアムが「バロンのことを言うやつは痛い目にあわせてやる」と言ってるのに爆笑しました。

ああ、苦労に苦労を重ねて騙されて失敗して・・・本当に自分が作りたい物を作るというのは大変だとあらためて尊敬の念を抱いた次第です。

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