ミッション・トゥ・マーズ

アメリカ 2000
監督 ブライアン・デ・パルマ
脚本 ジム・トーマス、グレアム・ヨスト、ジョン・C・トーマス

ミッション・トゥ・マーズ

えーデパルマがSF?と公開時は仰天したものですが、これが意外にちゃんと出来ていて二重に仰天。

いや、普通におもしろい。

まだこんな引き出しがあったのか、と言うのがファンとしては嬉しい驚きでしたね。

世間では珍作よばわりされてますが、科学的考証を無視して暴走しすぎないように、丁寧にファーストコンタクトまでを描いた手腕は評価してもいいのでは、と私は思います。

特に火星に着陸するために船外活動にさらされるシーンなんて、屈指の緊張感。

誤解を恐れずに言うなら、ゼログラビティあたりと比較してもなんら遜色はありません。

むしろゼログラビティの方がデタラメやらかしてる、と言っていいぐらい。

おおむねこの映画に対する批判の主たるものは、「2001年宇宙の旅」や「未知との遭遇」の模倣であるとか、エンディングの薄甘さに対するものだと思うんですが、そもそもデパルマと言う人はオマージュだの流用だのを臆面なく大胆にやらかして名をあげた人ですし、エンディングにしても、これをすっきりしない、と言っちゃったらSFの立つ瀬がない、と私は思ったりするわけです。

もう少しミステリアスでシニカルだったほうが多くの観客を振り向かせることが出来たのかもしれませんが、なにもかもなくした男に残されたたった一つの救いが、すべての真実を知るための旅であったとする展開は、現代劇では決して描けぬSFならではの輝きを放っている、といえるのではないでしょうか。

なによりもファンタジックに想像力を刺激してる。

これ、SFの美点だと私は思うんです。

唯一、ひっかかる点を挙げるとするなら、古代火星人の造形でしょうかね。

あれははっきり映像化するべきじゃなかった、と思います。

急に安っぽくなる。

善人しか登場しないのが物足りない、と感じている人もたくさんいそうな気がしますが、私は猥雑でエキセントリックなサスペンスやホラーに長けたデパルマがこんな性善説に基づいたかのようなドラマを作り上げてきたことにどこか胸打たれましたね。

いや、いい映画ですよ。

意外性はありませんが、私は一緒に火星に旅した気持ちになれましたね。

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