I・餓男 アイウエオボーイ

1973初版 小池一夫/池上遼一
スタジオシップ劇画キングシリーズ 全7巻

おなじみ小池現代劇「リベンジもの」のルーツといっていい一作でしょうね。

以降に発表された傷追い人(1982~)等の作品はすべてこのI・餓男を足がかりとしているように思います。

池上遼一と初タッグを組んだのもこの作品じゃないでしょうかね?

きちんと調べてないので自信はないですが。

しかしまあタイトルからして飛ばしまくってます。

I・餓男と書いてアイウエオボーイと読ませる、ってんだから小池先生の独特な語感もセンス全開だ。

で、肝心の内容なんですが、さすがに70年代初頭の作品で手探りな部分もあったのか、なにかと古いし、あんまり整ってない。

金も権力も持たぬ一人の若者が、殺された恋人の復讐を誓って巨大な犯罪組織に挑む、というおなじみの展開もこれが最初か、と思うと感慨深いものがあるんですが、とにかくお話がなかなか進まないし、主人公暮海猛夫のキャラ立てもあんまり上手じゃない。

やっぱりね、国家にもその影響を及ぼすような組織にたかがアマチュアボクサーくずれが太刀打ちできるとは到底思えないわけです。

プロの殺し屋相手に向こうを張ってみせるだけの超人性が暮海の内には見当たらない。

そうこうしている間にも暮海をかばって女たちがばったばったと死んでいく。

ま、これ、いつものパターンなんですけど。

一旦、アメリカに渡っちゃう展開もあんまりよくなかったように思いますね。

風呂敷広げすぎて、最終目的である「復讐」がどんどん遠くなっていく。

しかも最悪なのが、このシリーズ、未完なんですよね。

詳しい事情は知らないんですが、池上遼一が6巻で一旦作画を降板してるんです。

その後、音沙汰のないまま約五年後に、突然松久鷹人の作画で続きが再開されるんですが、人気が振るわなかったのか、再び中断。

以降、続編は描かれてません。

多分、小池一夫本人も興味を失くしちゃったんだろうな、と思います。

明らかにこのシリーズよりも優れた内容の作品を量産してた時期ですしね、80年代といえば。

今、改めてこの作品の価値を問うのはなかなか厳しいものがあるようにも思いますが、当時はバカ売れしたみたいなんでリアルタイムで読んでた人にとっては記憶に残る一作なのかもしれません。

荒唐無稽を恐るべき演出力、説得力で感動に昇華させる小池マジックはまだ開花前、といった印象ですかね。

コメント

  1. […] やってることはI・餓男ボーイぐらいから何度となく繰り返されている小池劇画お得意のパターン。 […]

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