オバケのQ太郎

1964年初出 藤子F不二雄
小学館 全12巻

藤子不二雄の名を日本中に知らしめた大出世作なわけですが、ファンならご存知の通り、もう本当に長い間この作品は入手不可能な状態にありまして。

調べたところによると最後の増刷があったのが88年だとか。

藤子F不二雄大全集で刊行が開始されたのが2009年ですから、約20年間、書店の棚からこのシリーズは消えていたわけです。

なぜ藤子不二雄は再販を許可しなかったのか、ご本人は、表沙汰にはしない、と公言されてますんで、諸説飛び交う状態のままなわけですが、 勘ぐったところでもはや先生は草葉の影、もうね、素直に再出版を喜べばいいと私は思います。

で、肝心の内容なわけですが、ただただ懐かしい、その一言に尽きますね。

生活ギャグといわれる「普通の家庭に異物を放り込んでドタバタ」、藤子先生お得意の黄金パターンの原点がここにあります。

特に私が好きなのは、ドラえもんと違ってオバQが全く役立たずな点ですね。

バカみたいに飯は食うわ、おっちょこちょいだわ、犬は怖いわでペット以上に使えないやつだったりするんですけど、なぜかしらその存在自体が不思議と周りから愛される。

こういうキャラクターを創造したのは本当に凄いことだと思います。

ただですね、その先駆性、嚆矢たる役割は高く評価するものの、トータルの完成度、と言う意味では71年から連載された「新オバケのQ太郎」の方がはるかに充実していたりします。

というのも本作、多くの方がご存知でしょうが、スタジオゼロの財務を支える仕事として、石ノ森章太郎、赤塚不二雄、つのだじろうらが作画に関わってるんですね。

大きくは合作なんです。

合作ゆえの統一感のなさ、どこかコントロールしきれていない詰めの甘さみたいなものがあるんですよね。

くさすつもりは全くないんですが、大人になってから改めて再読して、ああやっぱりおもしろい、と思ったのは藤子F不二雄が1人ですべてを取り仕切った「新」のほうでした。

ですんでね、あれ?こんなもんだった?と思った方は是非「新」のほうを読まれることをオススメします。

O次郎が出てくるのも「新」からですしね、きっと、ああこれだ、これこれ、と満足できることと思います。

でもあれですね、今から考えるとO次郎って、究極のゆるキャラだなあ、なんて思ったり。

そこまで先取りしていたのか、バケラッタ。

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