her/世界でひとつの彼女

2014 アメリカ
監督、脚本 スパイク・ジョーンズ

her/世界でひとつの彼女

人工知能を搭載されたOSが家庭用のパソコンに普及する未来を描いた異色のラブコメディ。

えー一応ラブコメディ、と書きましたが、実はこれ、ガチでSFだったりもします。

AIに人格は存在し、人と心通わせることは可能なのか、と言うテーマは、それこそ古くから繰り返し挑戦されてきたプロットであり、日本においてはマンガの神様手塚治虫が最初期から幾度も形を変え挑んできたモチーフでもあります。

この作品の場合、それが、冴えない中年男セオドアとAIの恋、と形を変えているだけで、主題は同じ。

とりあえず饒舌なAIとセオドアのやりとりは見事なシナリオ、というほかありません。

本当にこういう未来が来そうだ、と思える突飛過ぎない設定と、時間をかけてゆっくりと描かれたセオドアの心境の変化が、切迫するようなリアリテイをこの作品にもたらしています。

またスパイクジョーンズ、孤独な中年男の絵を撮るのが異様に巧い。

もう嫌になるような陰のあるカットが多くて、私、見終わった後しばらく気持ちが沈んじゃいました。

唯一、残念だったのはエンディング。

アカデミー脚本賞を受賞した作品ですが、私の感覚では、これ、オチてない。

なんだこのブツ切り、と唖然とした。

実に真に迫る内容だったのに、これはないだろう、と思いました。

AIがなぜ最後にああいう行動に出たのか、も曖昧なままだし。

ラブコメとしても優れているが、SFとしても傑作、と言いたかったんです、本当は。

でもこれじゃあ手放しで絶賛はやっぱりできない。

私の感覚がおかしいのかもしれませんが、どのような方向性で結ばれるにせよ、せめて絶望であるなり諦観であるなり希望であるなり、もう少しわかりやすい表情を最後には見せて欲しかった、と思う次第です。

エンディングギリギリまでは素晴らしい作品、と思っていただけに残念。

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