アドルフに告ぐ

1985年初出 手塚治虫

アドルフヒットラー、市井のユダヤ人のアドルフ、ナチの幹部のアドルフカウフマン、そこに日本人、峠草平を交えて激動の戦前、戦中、戦後を描いた歴史ドラマ。

タイトルは「3人のアドルフ」でも良かったかも知れないですね。

ただまあ登場人物の名前が同じアドルフである必然性はさほど物語にはなかったりもするんですが。

戦争に翻弄されてゆがんでいく3人のアドルフの関係性は重厚なヨーロッパ映画でも観ているかのようなシリアスさで、特に最後の顛末は文芸大作でも読んでいるかのようなやるせなさです。

半端じゃないスケールとヴォリューム。

これだけ登場人物の多い複雑なストーリーの作品で、全く破綻していないのがお見事。

全てが収まるべき所へ収束してます。

こういうマンガって今ないよなあ、と思ったりもしましたね。

あれこれ迷走した挙句、混乱したままお話を結んで困ったことになってる作品も多い先生ですが、本作に限っては高い完成度を誇っているように思います。

晩年の代表作の中に数えられてしかるべき一作でしょうね。

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