MAMA

2013 カナダ/スペイン
監督、脚本 アンディ・ムスキエティ
MAMA

いわゆるホラー映画って、もうある種の定型を模倣するしかないのかな、と最近私は思ってたんですけど、この作品を見て、ああそれもやっぱり作り手次第なんだ、と痛感した次第。

ちょっと一味違うぞっ!この作品は。

物語は幼い姉妹が狂気にかられた父親に自宅から連れ去られるシーンからはじまります。

姉妹を乗せて雪道を暴走する自動車。

お父さん、どこへ行くの、スピードが出すぎ、と不安げにつぶやく姉。

姉役のメーガン・シャルパンティエがめちゃめちゃかわいいです。

どこにも救いはありません。

どう考えても悲惨な運命しか予測できず、ああお願いなんとか助けてあげて、とオープニング5分も経過せぬうちに身を乗り出して感情移入。

紆余曲折あって、人里はなれた山奥のあばら屋に、たった2人取り残される姉妹。

冬なのに黒蝶が室内をひらひらと飛んでゆき、暖炉の前でなす術もなく妹を抱きかかえて途方にくれるヴィクトリア。

あ、これ傑作だ、との時点で強く確信。

というのもね、そのワンシーンがあたかも切り取った1枚の「絵」のようであったからなんです。

これが出来る監督、世界でそう何人も居ません。

今は亡き巨匠、スタンリーキューブリックをふと思い出した、というとちょっと褒めすぎですかね。

その後も美的センス溢れるカットの連続。

常々私は恐怖とは突き詰めると美を演出する、と思っているのですが、監督の目線は間違いなくそっちの方向を向いてます。

安っぽい惨殺シーンには重点が置かれておらず、色調は重厚でゴシック。

後半、ちょっとわかりやすい脅かし方が多かったか、と思ったのと、ティムバートンみたいなCGの使い方が見せすぎだ、と思ったりもしなくはなかったんですが、それでも処女作でよくぞここまでやった、と私は思いました。

母性と縁遠い、と思われるアナベルが最後の最後、どうやってヴィクトリアを引き止めたか。

これも見所のひとつ。

シナリオの甘さをマイナスしたとしても、13年のホラーの中では突出した出来だと思います。

お薦め。

この監督は多分将来的に凄いものを撮るぞ!

ギレルモデルトロが総指揮を買って出たのも納得の1本です。

必見!

コメント

  1. […] アメリカ 2017監督 アンディ・ムスキエティ原作 スティーブン・キングなるほど、こうきたか、と。キングの原作は読んでないんでわからないんですが、キングが小説でやりたかったことに近い出来なのでは、と私は思ったりしました。特筆すべきは「怖さ」のみを追求することに拘泥していないことでしょうね。学校や社会に上手に溶け込めない、訳ありな6人の子供たちの心の機微や友情を細やかに描くことに監督は心を砕いてる。ホラーなテイストはいうなればトッピングみたいなもの、と考えていいでしょう。物語の核としてあるのは、主人公たちの、子供であるがゆえのままならなさを噛みしめた苦いドラマであり、勇気を謳う冒険譚。そりゃ広くに受け入れられもするだろうし、ホラー映画史上最高の興収も記録するわ、と納得。どこか寓話的なんですね。単に残虐だったり、悪夢的なだけでカタルシスを提供しようとしていない。それはペニー・ワイズの顛末にも象徴されているように思います。純然たる怪物や悪鬼、というわけでなく、子どもたちが成長していく上で乗り越えていかなければならないハードルそのものである、という解釈も充分成り立つように思うんですね、殺人ピエロ。含みのもたせ方がうまいですよね、やっぱり。ただね、私のようなホラーマニアからすると、どこか物足りない、というのは幾許かありまして。だってスタンド・バイ・ミーが見たくてこの映画を手にとったわけじゃないですから。よくできてる、と思います。そこに反駁の余地はない。けれど、これをホラーと言い切られてしまうのは少しばかりの戸惑いがある。即物的な描写も辞さないダークファンタジー、と言ったほうが誤解を招かなくていいんじゃないかなあ、と思ったりもするんですが、さて、どうでしょうか。ま、とりあえずは続編をどう落とすのか、本来の原作にある「大人編」の料理の仕方に期待ですね。そこまで見て、初めて最終的な評価が下せるんじゃないか、という気もしてます。個人的には、MAMA(2013)でその手腕に唸ったムスキエティが高い評価を得たのは単純にうれしかったりはするんですけどね。 […]

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