K-19

アメリカ/イギリス/ドイツ 2002
監督 キャスリーン・ビグロー
脚本 クリストファー・カイル

ソビエトの原子力潜水艦K-19が、1961年におこした原子炉事故を映像化した実話もの。

ストレンジ・デイズ(1995)、悪魔の呼ぶ海へ(2000)と、赤字映画を連発したビグローの挽回作で、全米でスマッシュヒットを記録してます。

きっちりエンタメ路線ですね。

とんでもなく深刻な題材なのに、恐ろしさよりドキドキ感やスリルの方が上回る勢い、とでもいいますか。

あまり話題にならない映画ですが、まあ、理由は見た人ならわかると思います。

ソビエトの原子力潜水艦内における密室劇ですんで、当然登場人物は全員ロシア人なんですけど、こともあろうかプロデューサーは艦長アレクセイ・ボストリコフにハリソン・フォードを、副長ミハイル・ポレーニンにリーアム・ニーソンをキャスティングしてるんです。

いやいや、あんたら有名すぎるほどにアメリカ人やがな!と全米がつっこんだかどうかはわかりませんが、無茶振りがすぎるだろ・・・と日本人の私ですら思うぐらいなんだから批評家連中が黙ってるはずもない。

しかも言語は全編英語。

どこにリアリズムを見い出せば良いのだ?って話で。

それこそ渡辺謙が日本語喋りながら華僑の顔役演じるようなもんですよ。

違和感を拭えぬこと、拭えぬこと。

まあ、2002年にやるようなことじゃないですよね。

言語に関してはアメリカ映画の場合、仕方がないにしても、もう少しロシア軍の実像に配役だけでも寄せられなかったものか?と思う。

ヒットしたんで、結果オーライ、ってことなんでしょうけどね。

ビグローが巧妙だったのは、他国の軍事的アクシデントであるはずなのに、それをあたかも身近な出来事であるかのように描いたこと。

アメリカ人に受けそうな、男同士の友情と確執、それを超えた勇気の物語に史実が改変されてることは間違いない。

断言しますけどね、共産党執行部の現場無視な命令で出港した乗組員たちが、こんな風に前向きで団結心に固い連中なわけがない。

特に顕著なのは原子炉の暴走を止めるために、ろくな防護服もないまま生身の状態で冷却システムの修理に飛び込んでいく男たちを描いたシーン。

これ、事実は騙されて送り込まれたらしいです。

大丈夫だから行け、と命令。

被爆した修理班の人間は、艦内の医務室で「頼むから殺してくれ」と、その苦しさに泣きわめいたそう。

そんな場面はワンカットもないですしね。

作中では、乗組員が率先して危険区域に飛び込んで、その後は英雄扱い、もちろん当人も取り乱したりなんかしません。

不調をこらえ、不安を押し殺しながら、船を降りたあとの夢をけなげに語ったりなんぞする。

なんなんだろ、ソビエトもアメリカと変わらないんだ、みんな同じなんだ、だからこれからは冷戦時代の悪夢を乗り越えて仲良くやっていこうじゃないか、とでも訴えたかったんですかね?

どんな子供だましだよ。

というか、これもうアメリカの原子力潜水艦が起こした事故の話でいいじゃん、って。

なにもかもがアメリカナイズに焼き直されてるんだから。

そしたらもう少し素直に見れたし、感銘も受けた。

実録ドラマというよりはもはや完全に娯楽作なんですけど、それなりに質は高いんで、おかしな初期設定が悔やまれる、といったところでしょうか。

ビグローのうまさは実感できる一作なんですけどね。

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