
テクニカルに緻密なアンサンブルを聴かせつつも、長尺の曲では変幻自在にジャズやブルースロックを行き来し、ハードロック的な突進力も併せ持つ文句なしの1枚。
楽曲構成面での落差の大きさや、ボーダレスにやりたい放題な作風に最初はとまどうかもしれませんが、珍妙に感じるギリギリのラインで破綻していないのがお見事。
トリッキーな歌メロにぎょっとする事もあるんですけどね、ヴォーカルは相当巧いと思います。
プログレバンドでここまでソウルフルに歌う女性ヴォーカルがいるというのも珍しいケースだと思うし、このヴォーカルの存在がバンドのアイデンティティ構築に一役買っているのは確か。
もう、演奏を喰わんばかりの勢いで。
この内容でヴォーカルが演奏に負けてない、というのもすごい話だと思うんですよ。
全体的にもうちょっと落ち着いても良いのかもしれませんが、常に高ぶりっぱなしみたいなある種の乱雑さが、本作のスリルにつながっている気がします。
洗練された音ではないと思うんですけど、このテンションと偏狭な起爆力は一聴の価値あり。
混沌が指揮棒をふるいながらテクニックの鎧に身を包み、リビドーの赴くまま一気呵成に押し寄せてきます。
あたしゃ気にいった。
おそらくアルバムは73年発表のこの1枚のみ。
