マンガ

火の鳥

1967年初出 手塚治虫 おそらくこのシリーズが私のマンガにおけるSF原体験。 初めて読んだのは多分小学校高学年ぐらいのころだったと思います。 卑弥呼や武家社会を描いた作品は子供の脳味噌では理解できない歴史観に混乱させられ、ぴんとこなかった...

きりひと讃歌

1970年初出 手塚治虫 だいたい先生の青年向き漫画は半分ぐらいが暗すぎてしんどい、と私は密かに思ってたりするんですが、その中でも例外的にやたらとおもしろいのが本作だったりします。 モンモウ病という謎の奇病をでっち上げてその正体にジリジリ迫...

アポロの歌

1970年初出 手塚治虫 異色の性教育漫画、などと言われたりしてますが、そんなご大層なものでもなし。 多分後づけで誰かが言ったんでしょうね。 愛情に恵まれない子供時代を送り、屈折した青年になってしまった主人公が、何故か人知を超越した存在の力...

ボンバ!

1970年初出 手塚治虫 作品のテーマ、シナリオ構成とも、後に発表される「鉄の旋律」と非常に似通ったものがあり、違いがあるとすればこちらの方がいささか救いがあるか、ってことぐらい。 ああこりゃ低迷期の作品だなあ、って感じです。 何故同じネタ...

アバンチュール21

1970年初出 手塚治虫 初期の名作「地底国の怪人」のセルフリメイク。 何とか時代にそぐうようにもっともらしくあれこれ装飾、改変がなされてますが、地底探検、というプロット自体が焼き直すにはまだ早すぎたような気もします。 もちろんオリジナルよ...

人間昆虫記

1970年初出 手塚治虫 周りの人間を模倣することによって世の中を器用に渡っていく女の遍歴を描いた異色の人間ドラマ。 過分に70年代的。 結局何が描きたかったのかよく分からない、っては正直ありますね。 マキャベリアンとしてたくましく生きてい...

アラバスター

1970年初出 手塚治虫 透明人間になり損なった半透明人間を主役にしたダークヒーローものなんですが、悪徳を行使するスリルを上手に描き損なった、ってなところでしょうか。 主人公アラバスターが何を考えているのかいまいちよくわからない、というのは...

やけっぱちのマリア

1970年初出 手塚治虫 ベッドの中の脚を描いただけで警察に呼び出しをくらった時代を経て、大胆な性描写や裸がある程度緩和されて少年誌に載り出した頃、先生が「こっちは描けなくて控えていたのじゃない、描きたくても描けない時代の苦労なんかおまえた...

ふしぎなメルモ

1970年初出 手塚治虫 テレビアニメの企画が先行して執筆された作品。 当時、幼年誌3誌に同時に連載が始まったらしいんですが、ほとんどの原稿を後に紛失。 単行本化された原稿は先生自身が「一番つまらかったもの」と公言されているもので、実際確か...

I.L(アイエル)

1969年初出 手塚治虫 売れなくなった映画監督を狂言回しに、何にでも化けられる人外の魔性「I.L」が入れ替わりをかってでることによっておこる悲喜こもごものドラマを描いた作品。 一話完結形式。 全14話中、優れた話もあるんですが、そもそも「...

鬼丸大将

1969年初出 手塚治虫 そもそも別に原作があり、原作にそって連載を始めたが途中から先生が好き放題改変して全く別の物語になった、という特殊な作品だったりします。 平安時代を舞台に、海の向こうから漂着した外国人を「大江山の鬼」にみたててストー...

海のトリトン

1969年初出 手塚治虫 海洋冒険もの、と言いたいところですが、本作の場合、人類はどちらかというと脇役&悪役で、人類とは似て否なる知的海洋生物トリトン族とポセイドン族の洋上での覇権争いを中心に物語は進みます。 とはいえ、トリトン族はポセイド...

ザ・クレーター

1969年初出 手塚治虫 主に少年チャンピオンに連載されたSF/ホラータッチの短編を集めたもの。 先生はあとがきで、出来に差がなく一定のレベルを保持した連作短編集と仰ってるますが、個人的にはそうとは思えない、と言うのが正直なところだったりし...

大暴走

1969年初出 手塚治虫 3作の中編を収録した1冊。 表題作「大暴走」は船舶パニックものなんですが、パニックものらしいスリルやサバイバル感は希薄で、なんとなく企画モノな話をでっち上げてみました、ってな印象。 ストーリーの核となる人工知能の存...

フースケ

1969年初出 手塚治虫 今はなき漫画サンデーに連載された大人向けナンセンスSFの連作集。 フジ三太郎みたいな絵柄で主人公フースケの遭遇する突拍子もない出来事をユーモアたっぷりに描いた内容。 それなりに楽しめはするんですが、わざとすれっから...

サスピション

1968~82年初出 手塚治虫 主に青年誌に掲載された短編を集めた一冊。 サスペンス/スリラー系の作品が多いんですが、どれも総じて出来はいいように思います。 この本に収録されているほかの作品とは若干毛並みが違うんですが、「山の彼方の空紅く」...

ブルンガ一世

1968年初版 手塚治虫 手塚作品では過去なんどか登場したテーマ「突然自分の手に余るような超兵器、超常能力を得たらどうするべきなのか」を下敷きに、ファウストをからませて怪獣漫画に仕立て上げたのが本作、といったところでしょうか。 あとがきで「...

上へ下へのジレッタ

1968年初出 手塚治虫 今はなき漫画サンデーに連載された大人向け長編。 飯を食わないと絶世の美女に人相が変わるヒロインを、なんとか芸能界に売り出そうとする主人公のドタバタ奮闘記、といった按配の物語なんですが、途中からストーリーは、突然「ジ...

グランドール

1968年初出 手塚治虫 人間そっくりの人形をばらまいて地球を支配しようとする異星人のたくらみを描いた侵略SF。 なんとなくボディスナッチャー/恐怖の街を思いだしたりもするありがちなプロットではあるんですが、異星人のあやつり人形相手に孤軍奮...

地球を呑む

1968年初出 手塚治虫 なんとなくプロットが小池一夫風だなあ、とか思ったりも。 たった1家族の復讐心が世界をひっくり返す、という無謀な設定が悪い意味で漫画的で、どうにも作品にはいり込みにくい、というのはありますね。 何故か途中で世界観を同...

ノーマン

1968年初出 手塚治虫 本作、隠れた手塚少年SFの傑作では、思う次第。 特異な能力を持つ少年達が宇宙人の侵略から月を守るため、タイムスリップする物語なんですが、プロットの独特さといい、スケールの大きさといい、そのアイディアの豊かさには目を...

時計仕掛けのりんご

1968~73年初出 手塚治虫 タイトルは、かの有名なキューブリックの「時計仕掛けのオレンジ」のもじりなわけですが、内容は直接関係があるわけではありません。 主に青年誌に掲載されたSF、サスペンス系の短編を集めたもの。 秀作揃いです。 孤立...

空気の底

1968~70年初出 手塚治虫 プレイコミックに掲載されたホラーやミステリ、SFっぽい味つけの短編を集めた一冊。 総じて暗い。 中には猟奇的と思われるものもありますが、「うろこが崎」や「夜の声」「ロバンナよ」は先生らしい秀作だと思います。 ...

すっぽん物語

1966年~75年初出 手塚治虫 各誌に掲載された大人向け漫画の短編を集めたもの。 主にナンセンスコメディーが多いです。 特にこれといって突出した作品もないんですが、ばかばかしさに良い気晴らしにはなります。 秋竜山とか、あの手の路線です。 ...