2019年初出 ハセガワM
エンターブレインビームコミックス

一軒家内で謎の失踪を遂げた少女、マリアを探す人々が巻き込まれる怪異を描いたホラー。
新人なのかな?と思ってたら鮪オーケストラの変名でした。
この先、ずっとハセガワM名義で活動するつもりなのかどうかは知らないんですが、シュールでナンセンスなギャグ漫画を得意とする人が、いきなりこんなおどろおどろしいホラーを発表してきたのには少なからず驚かされましたね。
ま、笑いと恐怖は紙一重といいますし、ホラー作家はたいてい笑いをやらせても洒脱だったりするんで、やってやれないことはなかったんでしょうが、なんか跡形もないな、という印象は受けた。
鮪オーケストラのギャグ漫画を読んだのが相当昔なんで忘れてるだけなのかもしれないですけど、想像以上にドロドロだな、これは、と思ったりはしました。
日野日出志というと語弊があるかもしれませんが、心象風景らしき点描画の薄気味悪さは御大にも肉薄。
作者ならではの世界観が発芽しかかってるのは認める。
ただね、シナリオが割とありきたりなんですよね。
「一軒家内で消えた」などという大きな謎を提示しておきながら、オチがそれかよ、みたいな。
怨念が自由自在に大活躍しすぎ。
マリア本人の資質なのか環境のせいなのかよくわからないですけど、恨みが狂気に至れば空間も捻じ曲げられるし、人をとって食うことも可能、ってのはやり過ぎだと思うんですね。
まずはなぜ一軒家内で彼女は消えてしまったのか?を道理に沿って納得させてくれないと、その後の展開に説得力が産まれてこない。
マリアはかつてX-MENのメンバーだったりしたのかよ!って、つっこみたくもなるというもの。
心霊をオールマイティに捉えすぎなんですよね。
相応の縛りなり、ルールがないと、結局楽しんでるのは作者だけ、になっちゃうんで。
あと、見事にテンプレートな霊媒師とか安直に登場させるのはやめた方がいい。
下手な創作実話怪談みたいな安っぽさが強調されてしまうから。
未消化気味、というのが正直な感想でしょうか。
光るところもあるんで、この路線を続けるつもりならいつかは化けるのかもしれませんが、現状、まだまだ精進が必要といったところでしょうか。
笑いを加味してキ◯ガイホラーにする、という手もあるな。
鮪オーケストラ時代のシュールさを持ち込むことで意外と怖さが増すかも、と考えたりしました。
