2020 アメリカ
監督 ボーン・スタイン
脚本 マシュー・ケネディ

父親の遺言を無視して、いらぬことに首を突っ込んだらとんでもない目にあってしまった、ってなミステリ。
重々しくて舌を巻く驚きのオチが待ち受けてるのかな?と思いきや、さんざん期待させた割には「コレジャナイ感」がやや強めな内容でしたね。
まず大前提として、なんで父親は「真実を掘り起こすな」などという、いかにも誘っているかのような遺言を残したのか?という点が非常に不可解なわけですよ。
こんなの「さあ、謎を解き明かして頂戴!」と逆に訴えかけてるようなもの。
主演のリリー・コリンズ演じるローレンじゃなくとも、この状況下におかれてなにもしないやつなんてまず居ない、と私は思いますね。
そう考えるなら、一連の出来事そのものが、父親の仕掛けた底意地の悪い罠である、という解釈も成り立つわけで。
最後まで見れば、なぜ父親はかくも意地悪だったのか?がそれなりに理解できる仕組みになってはいますが、だとすれば、どうしてローレンに対して父親はそのような感情を抱くに至ったか?が今度は見えてこなくなる。
そこは想像に任せちゃいけない部分(想像できるけどね)だと思うんですよ。
登場人物の動機を補完する細部の肉付けが不十分なんです。
これは他の展開にも言えていて。
ここはもうちょっとちゃんと伏線敷いておくなり、それらしい演出を盛り込んでおかないと、ひどく突飛に見えてしまうでしょ?ってのがあまりにも多い。
早い話が隙だらけ。
つっこみどころ満載といってもいい。
特に私がこりゃ力ずくすぎるわ、と思ったのがサイモン・ペッグ演じるモーガンの終盤における変貌ぶりで。
そうでもしないことには盛り上がらない、ってのはわかるんですけどね、これだけの条件を提示されておきながら自らすべてチャラにしてしまう短慮な行動ぶりに「こいつは人格崩壊してるのか、それとも馬鹿なのか、どっちだ?」と呆れる他なく。
もう少しインテリジェンスにまとめ上げるやり方もあった、と思うんですよね。
中途半端にスリラーを意識してるというか、ホラーテイストを加味したがってるというか。
シナリオの全体像自体は悪くないと思うんです。
作り込み次第では十分、あっ!と言わせるポテンシャルは秘めてた。
各パーツをどう色付けして、どのように組み合わせていくか?が未熟だった、としか言いようが無いですね。
あと、リリー・コリンズなんですが、やり手の地方検事という役柄にはあまりマッチしてないように思いますね。
いつまでもかわいい、かわいいだけじゃやっていけない(もう33歳ですし)のはわかるんですけど、ああ、なんか背伸びしてるなあ、ってのが見てて伝わってきてしまう。
アン・ハサウェイみたいな路線でもう少しやっていくのもいいんじゃないか、という気もします。
今後を見据えて新機軸をアピールしたかったのかもしれませんけどね。
総括するなら「とっちらかったサスペンス」といったところでしょうか。
羊たちの沈黙(1991)みたいなスリルと緊張感を期待した自分も居たんですけどね、踏み外した羽目板を計算通りだとばかりに修繕しない様子に脱力でしたね。
ミステリの難しさをある意味痛感させる一作。
作品のまとう気配だけはやたら面白そうなんですけどね、なにかとままならんよなあ、監督よ、と諳んじてしまったよ私は。