るろうに剣心 最終章 The final

2021 日本
監督、脚本 大友啓史
原作 和月伸宏

るろうに剣心、全五部作の第四作目。

最終作であるThe Beginningとほぼ同時公開されましたが、内容も時間軸の上では逆行する五作目とリンクする形でシナリオ書かれてます。

原作がどうなってるのかは知らないんですが、なぜ最終作が幕末の「人斬り抜刀斎」時代の剣心の話になったのか、これを見れば納得。

壮大な前フリ、といえばそうかもしれません。

ま、物語の構造的には帝都を混乱に落としめんとする悪逆非道な集団を、剣心がその剣技でもってこらしめる、というおなじみのパターンであったりはするんですけどね。

敵の親玉が剣心に対して個人的な恨みを抱いてる、というのが今回のストーリーのミソ。

過去の過ちが剣心を精神面でも追い詰めていく、というシリアスさを新機軸としたかったんでしょうけど、まあ結論から言ってしまうなら、そりゃ難しいぞ、監督、と思ったりもする。

リアルタイムで原作漫画に心酔してたファンな皆様はすんなり受け入れられるのかもしれませんけどね「ほぼ時代劇風ファンタジーといっていい少年漫画全開なゆるいチャンバラものだよね?」と思ってる私のような視聴者にとって、作品の世界観の内でしか通用しない深刻さとか、もう、うっとおしいだけで。

言葉が悪くて本当に申し訳ないんですけど、キャラクターの内面に切り込むとか、掘り下げるとか、このシリーズに限って言えば、1ミリも期待してないわけですよ、私は。

勧善懲悪なテレビ時代劇的気安さで全然問題なかった。

そもそもがそんなに志の高いシリーズじゃなかったじゃない、って。

原作を現代でも通用するように改変したり、アレンジしたりすることを最初から(1作目から)放棄してたわけだから、制作側は。

それを4作目にして急に真顔になられてもなあ、ってのはどうしたってある。

敵の親玉の猪突猛進なシスコンぶりも相当しくじくってるキャラ設定だな、と思ったり。

こんな狭量かつ近視眼的な男が中華圏のマフィア組織のボスに、他国人でありながら居座る、なんて、できるはずがない、と著しく興ざめ。

そういうところに配慮できない(考えが及ばない)から漫画丸出しの子供だましな頓痴気さの渦中にありながらもシリアス、などという素っ頓狂をタレ流す羽目になる。

ま、物語には最初から期待してなかったんで、言っても詮無いことではあるんですけどね。

私が見たかったのは、1作目にして日本映画における殺陣シーンに革命をもたらした高速チャンバラがどのような進化をとげているのか、その1点のみ。

いや、谷垣健治は期待を裏切らなかった、と言っていいでしょう。

もう、無茶苦茶の一歩手前ですよ、ここまで来たら。

刀が刀の役割を逸脱して手の延長線上にすらみえるアクションの出来栄えには感服の一言。

敵役の新田真剣佑も素晴らしい身体能力を披露して役柄を全うしていた、と思います。

多分もうこれ以上ってないんじゃないか、と思いますね、このジャンルだと。

まばたきを許さぬ秒刻みな斬り合いなんてそうそう見れるものじゃない。

ただね、同じアクションを売りにしたジョン・ウィックシリーズに比べると、ちょっと新しいアイディアに乏しかったかな、という気がしなくもありません。

時代劇ですんで限界もあるんでしょうけど、もう少しシチュエーションや、場所にこだわれなかったものか、と。

贅沢すぎる注文なのかもしれませんけどね。

馬上での高速チャンバラとか見てみたかったなあ、と後からふと思ったり。

もうほんとマニアは目が肥えちゃってめんどくさいなあ、と自分でも思う。

あと、なんだか佐藤健がちょっと老けてみえたのが気になったり。

そりゃ1作目から月日が経ってるんだから当たり前だろ、と言われりゃ返す言葉もないんですが、年齢を表情に刻んでる剣心、ってキャラ的に不気味だと思うんですよね、私は。

そこはCGでも特殊メイクでもなんでもいいんで気を使ってあげてほしかったなあ、と。

誰も気にしてなかったのかもしれませんけどね、うーん、わからん。

ここ大事だと思うんだけどなあ。

感動とか、ドラマチックさを求めると肩透かしかもしれませんが、シリーズ4作目ながらもアクションのテンションが落ちることなく及第点、というのが総合的な評価でしょうか。

しかしここから日本の時代劇はどこへ行くんだろう、と思いますね。

第2、第3の谷垣健治とか出てくるんでしょうかね。

衰退を一途をたどるばかりの時代劇の風穴となればいいのになあ、と思うんですが、NETFLIXあたりで誰かやってくれんものか。

今ならすごい忍者ものが撮れるんじゃないか、とまるで別のことに思いを馳せたりもした一作でございました。

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