2007年初出 しりあがり寿
エンターブレインビームコミックス
結局たいして意味のないことを意味ありげに煽るのがしりあがりなんじゃねえのか?と少し懐疑的になってしまった一作。
それぞれが独立した短編の連作なんですけど、おそらく共通するテーマは我々の破壊した未来?を生きる子供たちの尊厳を誰が守ってやるのか?みたいな憤り。
それを、破滅の美学であったり、終末のカタルシスでもってシュールかつナンセンスに描いたのが本書だと思うんですけど、ま、手慣れたやり口で手癖気味だなあ、と感じられる部分も多くあって。
なんだろ、既視感が強いんですよね。
こういうのは過去作でさんざんお目にかかった、みたいな。
ていうか、弥次喜多でこの手のやつはこれでもかとばかりにやったじゃないか、と。
全体的にぶっ壊れてる、といえばぶっ壊れてるんですが、ぶっ壊れ方すらどこかパターンを感じさせるものがあって。
そんなのを詩情とか、叙事詩的なイマジネーションだけで乗りこえられたりとかしないわけですよ。
辛辣な言い方をすれば、それこそが「マンネリ」なんだから。
はっきりとしたオチも帰着点も見当たらないまま、どこか観念的、というのもよくない。
あ、いいな、と思える瞬間もあるんですよ、けど、結局まとめられないまま、というのが読者を失望させる一番の要因であって、作者の悪癖だとファンはもう知ってるんだから。
この手の、想像力と着想がすべてのSFファンタジーにおいて、作者のできることはもう残ってないのかもしれないな、と少し寂しい気持ちになった作品。
このままじゃあ、往年の松本零士か!といつか誰かにつっこまれてしまうぞっ!
主に漫画好きな中高年にしかわからん感覚だろうけどさ。
潮時だと思いますね。
今後の路線の転換を乞う。
この人は一体どこへ行くんだろう・・・と鳥肌の連続だった漫画家なだけに、こんなところでまだうろうろしてる、というのが正直辛いですね。