香港 1992
監督 ツイ・ハーク
脚本 ツイ・ハーク、チャン・タン、チャン・ティンスン
香港で大ヒットしたワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナⅠ天地黎明(1991)の続編。
今回は、清朝末期の動乱期に跋扈する白蓮教なる宗教団体(極右テロ組織に近い)と主人公、黄飛鴻の戦いがメインに描かれてます。
前作も似た傾向はあったんですけど、本作における黄飛鴻、もはやアメコミヒーローとほぼ同じと言っていいかもしれませんね。
もう、わざわざ首をつっこんでいくんだから、この人は。
弱きを助け、強きをくじく、博愛精神豊かな正義の人なのかもしれませんが、トラブルに遭遇するたびにそんなことやってちゃあ体がいくつあっても足りない、って話で。
現実の黄飛鴻は市民に武術を教えて自警団を組織し、理不尽な暴力に対抗するすべを教えたそうですが、そっちのほうがよほど現実的であって。
本シリーズにおける黄飛鴻は相当に偶像化されてるなあ、と。
ま、エンタメですからそれでいいのかもしれませんけど、ますます黄飛鴻が人間離れしていくなあ・・と思ったり。
もう少し等身大でも良かったんですけどね、90年代のカンフー映画にそんなこたあ、求められてなかったのかもしれません。
ほぼドラマ不在ですんで、内容がないといえばないんですけど(若き日の孫文が登場してたりはしますが、作中でそれほど大きな役割をはたしてはいない)やはり圧巻なのはアクションシーン。
前作も相当なものでしたが、今回も見劣りするどころか上回らんばかりの完成度で重力無視。
ワイヤーアクションを違和感なく組み手へ溶け込ませる動作設計、撮影方法に関しては最高峰のレベルにあるかもしれませんね。
今見ても全く見劣りしないどころか、マジでこれどうやってるんだ?と思ったりもする。
白蓮教のボスとの戦いもとんでもなかったんですけど、私が注目したのは提督を演じたドニー・イェンと黄飛鴻演じるジェット・リーの一騎打ちのシーン。
ぶっちゃけ、これが見たいがゆえにこの映画を手にとったようなものですから。
いやー、期待は裏切られませんでしたね。
映画の画面が横長であるがゆえに、見せ方の難しさから誰もが躊躇する「縦の動線」を駆使した格闘シーンにも驚いたんですが、ドニーが考案したらしき「布棍」という武器を使った両者のせめぎあいが凄まじい上に見たことのない絡みでして。
この作品におけるドニー、ジェット・リーのアクションがいまだ大絶賛される理由がよくわかりました。
それだけのために見ても損はない、と言い切れますね、これ。
近年のカンフー映画と比べても遜色ないどころか、いまだ高い独自性を堅持してる。
一般にワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナシリーズの最高傑作と呼ばれる本作ですが、これだけのアクションを見せつけられたらそう言われるのも納得。
国内の混乱どこ吹く風で超法規な超人性を発揮する黄飛鴻のキャラは物語的にどうかと思いますけど、ジェット・リーファンのみならず、ドニーファン(私のことだ)なら必見の一作なのは間違いないです。
しかし、ここまでのものを披露しておきながら売れるまでが本当に長かったなあ、ドニー・イェン。
よくぞ諦めずに頑張った、と褒めてやりたい(お前に言われるまでもない、って?)。
余談ですが、なぜかエンディングテーマをジャッキー・チェンが歌ってます。
いや、ほんと何故だ?