日本 2020
監督 中田秀夫
脚本 ブラジリィー・アン・山田
売れない松竹芸人、松原タニシが実際に体験した事故物件での怪異譚をつづったルポ「事故物件怪談恐い間取り」を映画化した一作。
ちなみに私は「期間を定めて次から次へと事故物件に移り住み、逐次、異常があれば書き起こして発表し、飯の種にする」という捨て身の芸人魂に感心し、原作本も読んでるんですが、読んでいるがゆえに企画そのものに無理がある、と思う次第。
だって原作は「こういうことがありました」で各話完結してる内容ですし。
そこにストーリーや物語性なんてない。
なんかトイレが変で調べてみたら前住人の婆さんがトイレで死んでた、とか、ロフトに首をつった痕跡があった、とかそんな小さな怪談話(異聞)の寄せ集めで映画が成立するはずもなく。
ドキュメンタリーならわかりますよ、松原タニシ本人に密着するとかね(すでに本人がYOUTUBEでやってますけどね)。
これをドラマ仕立てにする、って、どうするつもりなんだ?って話ですよ。
だってなにもないですもん、松原本人が事故物件探してうろうろしてる以上のことは。
もし本人が謎の死を遂げたりしてたらオカルトミステリ仕立てにすることも可能だったでしょうが(ひどいこと書いてますけど)、2021年現在、ぴんぴんしてますしね。
経過をたどるしかできることないじゃん、と思ったんですけど、見てみたら案の定、こういう経緯があって今ここです、で映画は終わってた。
一応ね、なんの脈絡も伏線もないままラスボスみたいなのが最後には登場して、なんとか物語を盛り上げようとしてますけど、私の場合「誰やねんお前!」と思わず画面に向かってツッコんでしまったような有様でして。
なんだかもう真面目に論じるのもそろそろ馬鹿らしくなってきたな、と思わなくもないんですけど、そんな内容で主演亀梨和也って、えっ、ひょっとしてこれはジャニーズ映画だったのか?とふと悩んでしまったり。
もしかして、かつて一世を風靡した?マッチのハイティーン・ブギ(1982)的なアレですかコレ?
話題が恐ろしく古くてすまん。
というかマッチはすでにジャニーズじゃなかったけれども、まあ、そりゃいいか。
せっかく長瀬智也や岡田准一(あえてキムタクとは言わない)がジャニーズ所属タレントのつとめる役者の格を引き上げたというのに、この映画は再びアイドルファンのためのアイドル映画に時代を逆行させようというのか?!と。
亀梨くんがデクだった、とは言いませんけどね、彼クラスのタレントなら自分がこの映画に出ることによって、一般層にどう受け止められるか?を考えてもいいと思うんですよ。
松原タニシが映画だと亀梨になっちゃうわけがないじゃん。
スタート位置がもうおかしいじゃん。
なんか松原タニシが話題になってるから人気タレントキャスティングして映画化しようや、ゲヘヘ、と笑う、松竹企画部の下衆な皮算用が透けてみえるようですね。
実際、ヒットしたけどね、なぜかわからんが。
供給不足なコロナ禍において需要と釣り合った、ってことなんでしょうけど勝てば官軍。
さりとて目先の銭に目がくらんでこんなことを続けていては日本映画に未来はない。
中田秀夫もなあ、こんな仕事で口に糊するぐらいなら本当に自分のやりたいことを実現すべく精進しなさいよ、と思いますね。
ホラーが好きなわけじゃないんだから。
もう若くないんだし、残された時間も限られてるんだし。
・・・なんで私は見たんだろうなあ、この映画。
あ、ヒットしたからだった。
♪ケ~ジ~メ~、ケジメなさい、あなた~、って事か、ひょっとして。
知らんけど。