2020 日本
監督 深川栄洋
脚本 川崎いずみ
依頼を受けて安楽死を請け負う医師、ドクター・デスの検挙に執念を燃やす刑事二人のコンビを描いたサスペンス。
原作は中山七里による連作小説「刑事犬養隼人シリーズ」第4弾の同タイトルらしいんですが、私は未読。
原作ファンの感想をいくつかチェックした限りでは、映画版は相当改変されてるみたいです。
特に結末がまるで別物だとか。
そりゃそうだろうなあ。
率直に言わせていただくなら、安楽死を職業として請け負う医師の存在そのものがもはや現在においては陳腐だし、しかも通称がドクター・デス(ジャック・ケヴォーキアンの異名だかなんだか知らないけどさ)って、悪役プロレスラーかよ、って話であって。
古い話を持ち出して恐縮なんですけどね、ブラックジャック読んだことねえのかよ、と。
もう70年代にやってるじゃない、似たようなことを、手塚先生が。
なんで今さらブラックジャックにおけるドクター・キリコの問いかけを、改めて映画で検分しなきゃなんないんだよ、って。
ただそれもね、本人の意志を無視して延命治療を施すことを是とする日本の現代医療の矛盾に切り込むつもりなら、古びた設定も息を吹き返すかもな、とは思うんです。
未曾有の高齢化社会が招く高齢者医療の破綻を目前にしてるわけですしね。
こんなことになるなんて、さすがの手塚先生も70年代には予想してなかったでしょうし。
多分原作が高い評価を得たのは、カビ臭い設定をも力ずくでひっくり返す説得力を結末に用意してたからだと思うんです。
いや、読んでないからわかりませんよ、でももし小説が尊厳死について語られたものであったなら、まさに今、考えなきゃいけないテーマだろうと。
医学の進歩を持て余す歪んだヒューマニズムの絶対性に一矢報いるつもりなら、ドクター・デスも、その存在性に別の意味を併せ持つことになるだろうと思いますし。
で、この映画がですね、私の想像と違ってどうしようもなく駄目だったのは、わざわざ改変したのにもか関わらず、ドクター・デスを単なるシリアルキラーに仕立て上げてしまったことにあるといっていいでしょうね。
つまり陳腐さが陳腐なまま、カビ臭さもカビ臭いまま。
特に終盤のやっつけ仕事ぶりときたら本当にひどくて。
主人公の娘を拐かすくだりなんて説得力皆無。
最後の攻防に至っては都合が良すぎてあくびが漏れる。
あれこれツッコミだしたらきりがないんですけどね、なんで類似作が大量に溢れかえってる方向へとつっこんでいくかな、と思うわけですよ。
エド・ゲインでもヘンリーでもテッド・バンディでもなんでもいいんですけどね、やってることはその手の連続殺人鬼映画とほぼ同じですから。
自分たちでハードル上げて早々と玉砕してるのに気づいてない状態。
綾野剛は熱演でしたし、榎本明がものすごい存在感を発揮してたんで悪くはなかった、と言いたいんですけどね、これじゃあ科捜研の女レベル。
晩酌しながら飯食ってる疲れた中高年の暇つぶしか、早送りで映画見るティーンエイジャーの仲間内でのネタにしかならない。
とりあえずダークウェブで安楽死依頼を受け付けてる、って段階で私はもう脱力でしたね。
しかもチャットやったりしてるし、犯人。
もうね、警視庁のサイバー犯罪対策課を知らなさすぎ。
凡作。
せめてバディものとして少しでも楽しめる要素があったなら、と思うんですが、それすらもおざなりでなんら気の利いたユーモアもなく、なんのための相棒北川景子かと・・いや、もういいか、これ以上は鞭打つまい。
忘れることにするよ、見たことを、うん。