新感染半島 ファイナル・ステージ

韓国 2020
監督、脚本 ヨン・サンホ

韓国で爆発的ヒットを記録した新感染(2016)の続編。

ウイルスが蔓延し、無政府状態となった挙げ句見捨てられてしまった朝鮮半島を舞台に、街なかへ放置されたままの現金を回収するべく、無謀にもゾンビだらけの元韓国に潜入する3人組を描いた内容となってます。

前作より4年後の設定なんですが、登場人物はすべて一新。

高速列車の中という閉鎖性が特徴的だった新感染ですが、今回は荒廃した都市そのものが戦場。

で、これ、色んな意見があるかとは思うんですが、私は「なにかと難しいのでは・・」とまず最初に思った。

というのもね、たいていのゾンビものは無政府状態で荒廃した世界が舞台になってるから、なんですよね。

ウォーキング・デッドの例を挙げるまでもなく、それこそ80年代ぐらいからずーっとゾンビものは街ぐるみで周りは全部敵、というのがセオリーだったわけですよ。

誰もがその手のわかりやすいサバイバルにどう違う色をつけるか?に苦心してきたわけで。

列車の終着駅が「救い」であり、到着までどうやって持ちこたえるかがスリルを倍化していた前作に比べ、今回はミッションの成功がすなわち物語の着地点という、スパイ・アクションのような様相を呈してて。

いや、これは続編とはいえ別物だろうと。

ゾンビものなのは確かですけど、どっちかというとマッドマックス 怒りのデスロード(2015)の世界観に近いような。

そうなってくるとやっぱりね、普通にやってたんじゃあ「また、この手のサバイバルホラーか・・・」って、なっちゃうわけですよ。

もう、ゲップどころか目にするのも嫌なレベルでその手のゾンビ映画は溢れかえってますから。

ハッタリのひとつやふたつは絶対必要だし、ケレン味たっぷりだと言われるぐらいじゃないと「ゾンビだらけの半島」という荒唐無稽を楽しめない。

で、結果どうだったのか?というと、おおむね予測の範疇で大きく意外性はなかった、というのが正直なところでしょうか。

そりゃ半島に生き残ってる連中もいるだろうし、無法者もいるだろう、って。

もちろん組織化してたりもするだろう、と。

なにもギターかき鳴らしながら火を吹け、とは言いませんけどね、既視感が強すぎるシナリオ進行を彩る遊び心が皆無なんですよね。

真面目か、と。

まあ、真面目なことがきっとヨン・サンホ監督の美点なんでしょうけど、それが今回は少なからず裏目に出てた気がしますね。

うーん、スケールを大きくしたかったのかもしれませんけどね、私はそれを「続編が陥りがちな罠」だと思いますし、そもそもそんなのは承知してたからこそ「高速列車」というアイディアだったのではないか?と思ったりするんですよね。

違ったみたいだ。

ただ、そんな手垢感の蔓延する物語の渦中にあって、さすがにエンディングだけは強引に盛り上げてきましたね、監督。

「とってつけたよう」「クサい」というご意見もきっとあるんでしょうけど、力を振り絞ってきた、と私は思った。

厭世的でペシミスティックでないのはエンターティメントとして安心できるのではないかと。

前作よりはインパクトもスリルも軽減したように思いますが、悪くはないんじゃないか、と思います。

しかし世界中でコロナウイルスが猛威をふるう中、よくまあこんな内容のバイオハザードものが撮れたものだな、と思いますね。

日本だとコンプライアンスがどうのこうので関係者全員が及び腰になりそう。

韓国はそのあたり、線引きがちゃんとしてるんですかね。

映画は映画だから、みたいな。

余談ですが、半島と言いつつも北朝鮮に全く言及されてないのがちょっと気になりました。

38度線でくいとめられてるのか?

その手の描写があれば星1つ分ぐらいは上乗せで唸ったかもしれません。

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