林檎料理

1984年初版 ちばひさと
東京三世社

<収録短編>
グリーン メッセージ
花ざかりの午後
林檎料理
黒の神話
鈴蘭
果樹園
花子さんの日

リアルタイムでは全く知らなくて、偶然古書店で見かけて手に入れた一冊。

何が私を惹きつけたか?というとその画力ですね。

メジャーどころに比肩するどころか、それ以上なのでは?というぐらい絵が上手い。

タッチは少女漫画的なんですけどね、まつ毛の一本一本にすらこだわりが見て取れるというか。

褒めすぎかもしれませんが、こりゃもう伝説の漫画家、内田善美にも手が届こうとする勢いなのではないか?と。

調べてみたら名香智子や水樹和佳のところでアシスタントをやってた人だとか。

別系統な絵柄な気もするんですが、ああ、なるほど、と。

しかしこれだけの絵を描ける人が、さして大きく話題になることもなく埋もれていくんだから少女漫画界恐るべし。

風化のスピードは一般誌、男性誌で活躍した漫画家より早いのではないか、という気がしますね。

で、肝心の内容なんですけど、身も蓋もない言い方をしちゃうなら萩尾望都の直系です。

山岸凉子の影響を指摘する人もいるみたいですが、彼女ほどの毒はないかな・・と。

特に「グリーンメッセージ」「花ざかりの午後」はまんま萩尾望都。

それ以外の短編は、しいて簡便に片付けちゃうなら今で言うところのBLですかね。

はっきりいってノーマルなオッサン読者にとってはきつい。

即物的ではないんで、適当にBLでくくるな!とお叱りをうけそうではありますが、東京三世社のマイコミックスでこの手の漫画に遭遇するとは思ってなかったんでギャップが辛くてですね。

SFを期待してたものだからさ。

当時の反響とか全く知らないんで、読者にどう受け止められていたのか判じかねるものがあるんですが、カルト的人気を博してそうな気はしますね。

今でも大事に持ってる人が居そう。

現在はほぼ断筆状態のようですが、80年代にこんな漫画家がいたのか、という驚きは今読んでもあるのではないか?と。

何かを少し調整してやれば時代に名を残した気もするんですが、こればっかりは運もありますしねえ。

ちなみにデビュー短編集らしいです。

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