2013年初出 六道神士
少年画報社ヤングキングコミックス 全2巻
仮想現実に誘導するデバイスをうっかり身につけてしまったために、昼夜問わず性感を刺激される羽目になってしまった処女のプログラマーを描いたエロコメ。
デバイス自体はプログラミング次第でどうとでも使えるんですが、そのときは偶然にも勃起不全な男性のためのエロ仕掛けが施してあった、というのがこの物語のミソ。
おかしな親和性を主人公女性が発揮して、なぜかデバイスがはずれなくなっちゃうんですよね。
そりゃもう意図せず悶えるわ、さかるわで大変だ、って話だ。
つーか、これ、エロ漫画じゃねえかよ!と。
やってることはほぼポルノ。
これまで寸止めのエロスで男性読者のご機嫌を伺ってきた作者も、何かが吹っ切れたように真正面から目合いを描写する有様だ。
どうした、六道神士、と。
初期の路線に今更戻るのか?と。
というか、割と描きなぐり気味だった昔の中途半端なエロ路線を後悔、今度は本気でやってやるよ、俺がマジでやればこれぐらいは余裕でできるんだよ!見てろよ!とばかりのリベンジ作なのか?と。
どちらにせよ、デスレス(2010~)みたいな伝奇SFの傑作を読んだあとでこのアプローチは正直きついです。
脇目もふらずにひたすらエロスの追求に余念のない甘詰留太ならともかく、色々できることを証明してしまったあとでたどり着いたのが再びのエロス、ってのがなんだかもう・・・。
ま、大物と呼ばれる映画監督の多くは、最後の監督作のテーマがエロスだったりするパターンが多いですけどね、そういうことじゃないだろうしね、きっと。
漫画家引退するわけでもないだろうし。
これは最後まで読めないかもしれない・・・と思ったりもしたんですが、なにげに掲載誌を調べてみて、あ、なるほど、と少しだけ腑に落ちた部分もあって。
ヤングキングのレーベルから発売になってますが、この漫画自体はヤングコミックに連載されてるんですよね。
はて?ヤングコミック?見たことねえなあ、とググってみたら成人漫画誌だった。
ああ、そうか、誌風に応じた、というわけか、と。
そうなるとまた話は違ってくる。
プロとして要求されたエロにはきちんと答える、ということなら、注目すべきはエロの間隙を縫ってどう作者らしさを表現していくのか、ということになる。
で、最終話ですよ。
いや、軽く驚きましたね、私は。
この内容で最後の最後にSFするのか、と。
まさかタイトルまでがオチのための前フリだったとは思わなかった。
いや、恐れ入った、伊達に青年誌で何十年も第一線をはり続けてきたわけじゃないな、六道神士、と素直に感服。
間違いなくエロ漫画ですが、この作品にはベテラン漫画家の矜持があると私は思いますね。
途中で放り投げそうになってるあなた、とりあえず最終話までがんばりましょう。
予想外のSF的発想の飛躍に驚かされることは保証します。