花縄

2003年初出 小池一夫/森秀樹
小池書院 上、中、下

死病を患い、すっかり体が弱ってしまった晩年の長谷川平蔵(鬼平)と、奇妙な縁でその手下になった元相撲取り玉椿の大江戸捕物帳。

老いたりとも火付盗賊改方の長として、悪党は許さねえと病身に鞭打つ鬼平を、筋骨隆々たる巨体でサポートする元相撲取りという構図は面白かった、と思いますね。

あまりに有名な池波正太郎の「鬼平犯科帳」の向こうを張るプロットだった、と言っていいと思います。

というかこんな奇抜な創作はほんと小池一夫にしかできない、と思う。

また巧みなのが、物語そのものが時限装置付きであること。

もう、いつくたばってもおかしくないんですよ、鬼平。

連載2回めでほとんど足腰立たない状態ですから。

突然最終回を迎えても全然不思議じゃない。

そこにね、残された命の灯を、最後までプロフェッショナリズムで貫こうとする男の美学、生き様が透けて見えるわけですよ。

そりゃもう、毎回死にものぐるいですから。

その緊迫感たるや半端じゃない。

やべえ、こんどこそお迎えがきた、と思うこと数度。

読んでてぐっ、とこないはずもなく。

もう本当にずるいなあ、小池一夫、と。

ただ、少し残念だったのは、如実に演出力が落ちてるな、とわかる作劇が多かったこと。

こまやかな心理描写、白でも黒とねじ伏せる説得力が全盛期と比べて劣ってるのは確かで。

ドラマチックな人情路線もどこかプロセスをすっとばしてるな、と思える節があって。

作者が過去に原作した時代劇作品と、同じような方向へお話が進むことが多かったのも少し興ざめ。

もう仕方のないことだったのかもしれませんけどね、この時小池一夫67歳ですし。

新しいものを求めるほうが酷、というもの。

むしろ67歳で連載を始めて、これだけのものが作れれば上出来かもしれない。

あと、私が少し気になったのは森秀樹の作画が子連れ狼の続編じゃないにも関わらず、小島剛夕の模倣みたいになっちゃってること。

書き文字まで真似てるみたいな感じなんですよ。

うーん、なんだろ、新子連れ狼(2003~)の連載で変に癖ついちゃったんだろうか。

ほぼ同時期の連載なんで、描き分けるのが難しかったのかもしれませんけどね。

ともあれ、きちんと完結までこぎつけた最後の新作かもしれないんで(ちゃんと調べてませんが)ファンは要チェックかもしれません。

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