極東事変

2018年初出 大上明久利
エンターブレインハルタコミックス 1巻(以降続刊)

終戦直後の焼け野原な日本を舞台に、変異体と呼ばれる生体兵器とGHQの暗闘を描いた歴史改変SF。

細野不二彦の作品でヤミの乱波(2003~)ってのがありましたけど、戦後動乱期のデタラメさを手玉にとって、非現実へと誘導する手口は似てますね。

やりたいことはわかります。

さらにスケールが大きくなれば、きっと東冬の嵐ノ花 叢ノ歌(2008~)みたいになるんだろうな、と思う。

ただね、この漫画、キャラクターといいシナリオ進行といい、すごくアニメっぽいんですよね。

生々しさやリアリズムより、とっつきやすさ、親しみやすさが優先されているというか。

断言しますけど、敗戦直後の日本において、この漫画に出てくるような人格、性質の日本人なんて一人も居なかっただろうな、と思います。

いかにも漫画にしか存在しないキャラを、76年前の日本に放り込んでドンパチやらせてる感は非常に強い。

だから駄目、とは言わないですけど、映画でよくあるような非合法組織と警察(元CIAの最強のオヤジでもなんでもいいんですけど)の駆け引き、血なまぐさい攻防をお手本として、それをそのまま過去へ持ち込んでるような感触があって。

そこはまあ、その手のアニメを参考にしてるのかもしれませんけどね。

ガジェットや時代性にこだわってるのはわかるんです。

けど、肝心の中身が現代的なままではどうしたってうわついて見えるというか、浮足立ってるというか。

なんか異世界ファンタジーでも読んでるような気になるんですよね。

で、異世界ファンタジーとするには終戦直後の日本、という題材がちょっと身近過ぎた。

世代的に戦争を体験した人達はほとんどがお亡くなりになってますけど、まだ江戸時代ほど記憶に遠くはないように思うんですよ。

当時を詳しく知ってる人って、意外とたくさん居るんじゃないかと思うんです。

架空戦記小説がかつてブームになったりもしましたしね。

そりゃどうしたって荒唐無稽さ、空々しさは現代劇(現代SF)以上に強く香ってくる。

なにも知らない若年層に希求するものはあるかもしれませんが、ある一定の世代以上は厳しい気がしますね。

戦後動乱期が魅力的な題材に思えたんでしょうけど、作者の資質を鑑みるなら掛け合わせるべきではなかったのでは・・・と私は思います。

漫画家としての力量は高いと思うんですけどね。

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