ポーランド 1962
監督 ロマン・ポランスキー
脚本 ロマン・ポランスキー、イェジー・スコリモフスキ、ヤクブ・ゴールドベルク
どことなく倦怠感漂う夫婦と、ヒッチハイクで拾った青年3人の、ヨットでの一夜を描いた心理劇。
独特な作品だなあ、というのはありましたね。
物語がどこを向いているのか、どこへ行こうとしているのか、全く読めない、というか。
なにかと暗示的ではあるんです。
行きずりの青年に対してヨットへの同乗を勧めておきながらやたら高圧的な夫、そんな夫をつねに冷めた目線で見る妻、反発しながらも唯々諾々と従う青年。
そして青年が弄ぶ1本のナイフ。
どこか危うい関係性が、ナイフの暴力的な輝きに一気に破綻させられてしまいそうな、そんな奇妙な緊張感を隠し持ちつつ、物語は表面上、淡々と進行していきます。
閉塞した雰囲気漂う船内と、光を反射する湖の鮮やかなコントラストが印象的です。
ストーリーが突然動き出すのは終盤なんですが、誰にも見咎められることのない船上で、二人が求めたものはなんだったのか、それがやたら生々しくてどこか本質的です。
このシーンがもやもやしてたものを全部わかりやすくしてくれた気がする。
意味深なのはラスト。
交差点で行き先を思案する夫婦の車。
かみ合わない二人の会話。
どの方向に向かうにせよ、きっとこの二人はこのあとも夫婦なんだろうな、と私は思ったりしました。
棘のようにひっかかりながらも、いずれは記憶の底に埋没してしまうであろう湖での不穏な一夜を描いた作品。
おもしろい、というのとはちょっと違うかもしれませんが、なんだか私はポランスキーの若さにそぐわぬ達観をみたような気がしましたね。
不思議に記憶に残る1本です。
コメント
[…] どことなく監督の初期作水の中のナイフのような質感があります。 […]