2018年初出 石黒正数
講談社アフタヌーンKC 1~3巻(以下続刊)
大災害によって文明が荒廃した未来の日本を舞台に「天国」と呼ばれる約束の地を目指す少年と少女を描いたディストピアSF。
なんとも懐かしい質感を有するSFだなあ、と。
80年代~90年代、誌面を賑わせたあの頃の漫画が帰ってきたような。
近未来SFなのに懐かしい、ってのはいったいどういうパラドックスなんだ?つーか、SFは現実(今)と地続きに飛躍するものじゃないと駄目なんじゃねえのか?プロットそのものがノスタルジックでどうする、と思わなくもないんですが、リアルタイムで「あの頃」を通過していない若い読者にとってはこれも新鮮に映るのかもしれません。
なんせ某誌のランキングで人気投票1位だもんなあ。
底意地の悪いことを書くようですけどね、懐古的な内容のSFが首位をマークするほど今のSF漫画は駄目なのか・・・とあたしゃ少し遠い目になってしまった。
悪い、とは言いませんよ、でもこの作品がやってることって、やはり大友克洋であり、アップルシード(1985~)やEDEN(1997~)の同根別株にすぎないですしね。
40代、50代の読者が懐かしむ分にはいいんでしょうけど、これがSFの保守本道と認知されてしまうことに私は危機感があって。
SFって、想像力と発展性の文学であってほしいんですよ。
一周まわってなんだか新鮮、では決してない。
ただ、作者本人も大友の影響下にあることは公言してますし、SF云々よりもファン気質が先に立った創作かもしれないんで、評判に惑わされて結論を急ぐのは浅薄かもしれませんけどね。
どうあれ、3巻まで読んだ時点で「これは単なる模倣、オマージュと切って捨てられないものがあるぞ・・・」と思わせてくれるものは見当たらなかったですね。
完結してからちゃんと評価したいところですが、うーん、先を読む気があんまりしなくて・・。
あと、少し気になったのが、時々気を抜いたような絵を肝心な場面で描いちゃう傾向があること。
何だこの表情、キャラの目の焦点があってないじゃん、とか。
技術的な問題なのか、資質の問題なのかわかんないんですけど。
これまで読んできたものが色々邪魔をして、私はあんまり楽しめなかったですね。
物語作りには定評のある作者なんで、最後まで追うことができれば相応の満足感は得られるのかもしれない、と思ったりはしますが。