スーパー・カルテジアン・シアター

2016年初出 六道神士
少年画報社ヤングキングコミックス 全5巻

謎の外宇宙生命体が操る未確認飛行物体との接触事故により、肉体の大半を失った主人公ヒロイン御櫛田春月と、春月が片思いする男性、筥崎君の「ありえない日常」を描いたSFコメディ。

で、何がありえないのか?なんですけど、宇宙人の手筈でミニチュア化した春月が筥崎くんそっくりの外観を有した人型ロボットを運転する羽目になっちゃってること。

物語の出発点はあたかも鉄腕バーディー(2003~)のよう、だったりしますが、憑依ではなく、ロボット化してしまうあたりに作者の奇想が光りますね。

春月は筥崎くんの頭蓋内をコックピットにして、筥崎くん本人として学園生活を送らなきゃならなくなるんですけど、操作レバーが車のハンドルだったり、頭に操縦者が居座るお膳立てが世代的に笑えた、というのはまずあって。

戦闘メカザブングルでマジンガーZかよ!みたいな。

若い人は多分、全然わかんないんでしょうね。

ヤングキングアワーズの読者層を鑑みるなら、いいのか、それで?と思わなくはないんですけど。

それとも多くの青年向き漫画雑誌は今やM2層が支えているんでしょうか?

えー、そこは調べきれなかったんで、さておき。

基本、学園ものなんですけど、少しばかりのSF風味で悪ふざけしまっせ!みたいなアプローチがなんとも作者らしくていいな、とは思いましたね。

しかも今回、ラブコメだったりしますんで。

私の知る限りでは六道神士って、ラブコメ描いてそうで描いてないと思うんですよ。

ラブコメ風の変化球はたくさん披露してきたと思うんですけど、正面からラブコメ、って多分やってない。

やれるのか?という不安もありつつ読み進めていったんですけど(なんせ作者も40代後半ですし)、結果、いつもどおりのデタラメな面白さはキープしつつも、それがロマンス調にドラマチックにはならなかった、というのが正直なところでしょうか。

やはり女性を主人公にした、というのが難しかったと思うんです。

そりゃね、ある程度は乙女の揺れる恋心も描写しなくちゃなんないでしょうし。

なんせ10代の女子高生なんだから。

どうしてもね、春月のキャラクター像がエクセル・サーガ(1996~)の主人公、エクセルと似たような印象を抱くものだったりするんですよね。

悪の秘密結社とその狂信的な部下ならエクセルでも良かったんでしょうけど、普通の女子高生の恋愛模様があまりにも「さばけすぎ」なのは、男性読者対象の漫画とはいえ共感を得にくいし、不必要に現実味がなくなる気がするんですよ。

しいては笑えても盛り上がらない。

あと、女性読者を勘定に入れないなら、操縦者と人型ロボットの立場は逆転すべきだった、と思います。

春月そっくりのロボットを運転する筥崎くんの慌てっぷり、混乱を描いた方が多分、男性読者の食いつきは良かった気がしますね。

手垢っぽいし、生々しくなるから作者としてはやりたくなかったのかもしれませんが、こんな女子高生は居ない!とつっこまれる隙を与えてしまうのと、どっちが良かったか?といえばトータルで微妙だと思うんです。

何も考えずにバカ笑いする分には最高に楽しいです。

けれど、じゃあエクセル・サーガ以上か?といえば決してそうではないですし、デスレス(2010~)ほどの、笑いと共存するミステリがあるわけでもない。

手癖でやっちゃってる部分はあったかもしれません。

今のところ(2021年現在)作者の最後の連載作品で、ここ数年音沙汰がなかったりはするんですけど、ここで終わりにしてほしくはないな、と思ったりはしますね。

若い人向きじゃないカテゴリーで、そろそろなにかできるんじゃないか?と私は考えてたりします。

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