LIP

1987年初版 大野安之
夢元社LIVEコミックス

人類が広く宇宙に版図を広げた未来を舞台に、なぜかいつも水着姿の主人公ヒロインが、自社製品を他天体住人に売りつけるべく、セールス活動に邁進する様子を滑稽に描いたドタバタSFギャグ。

いかにも80年代的だなあ、と思いますね。

うる星やつら(1978~)以降のSFコメディは、一時期全部こんな感じだった気がする。

大きな売上を計上して本社に認められ、いつの日か地球に帰る、という目的が主人公にはあるみたいなんですけど、失敗ばかりでなかなかうまく行きません。

その辺はこの手の漫画のセオリーどおりなんですけど、他天体の文化や住人の描写、ライバル会社のキャラの作り込みがいい加減なんで、どうにも盛り上がらなくて。

ナンセンス路線なのはいいんですけど、作者が興味あることにしか力を注いでない節もあって、それが雑に感じられたらもうアウトでしょうね。

箸にも棒にもひっかからない、手抜き、と評する人もきっと居ると思います。

私がこりゃ駄目だ、と思ったのは、なんの伏線も前フリもないのに物語が終盤、突然リベンジものになっちゃったこと。

なんで急に、こうもシリアスにお話が展開しちゃってるの?と戸惑うことしきり。

後付けで、主人公の無謀な行動を補足する種明かしがあったりはするんですけどね、序盤とあまりにも温度差がありすぎるというか、突飛すぎるというか。

読み返してみたらそれらしい「匂わせ」はあったんですけど、単行本一冊分の長さでこれ全部やるのは無茶。

どうしたって振り落とされる読者はでてくる。

どこかTHAT’Sイズミコ(1983~)に近い感触もあるんで、ファンは手元においておきたい一冊になるかもしれませんが、後年改めて評価が高まるような作品ではないな、と思ったことは確か。

この数ヶ月、大野安之の作品を一通り追いかけてきましたが、やはり最高傑作はイズミコ、で揺るがないかもしれません。

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