クーの世界

2000年初出 小田ひで次
講談社アフタヌーンKC 全2巻

ミヨリの森(2003~)を先に読んでしまったので、小田ひで次もデビュー当時から随分変わったなあ、という印象を先ごろ受けたんですが、ちゃんと架け橋たるミッシングリンクな作品が存在してましたね、見落としてました、面目ない。

やはり発表年代順に読まなきゃいかんなあ、と反省した次第。

作者長編2作目になる異世界ファンタジーなんですが、ああ、随分肩の力を抜いてきたな、と思いましたね。

描かれてるのは生と死が地続きな現実とも空想ともとれる世界。

主人公の少女は、どこでもない異世界を死んだはずの兄にそっくりな男と旅するんですが、ま、ありそうなパターンのファンタジックなプロット、と言ってしまえばそれまで。

そこはね、うん、あんまり辛辣になりすぎるのもアレなんで、とりあえずは様子見で読み進めるとして。

観念的で深慮を強いる拡散(1993~)から、ややこしさを排除して主人公の性別を変更した物語、と捉えることも可能でしょう。

どこかロードムービーっぽい質感といい、旅することが何らかの答えを導く展開といい、ストーリーの屋台骨は同じ。

現実から位相をずらしたことによる自由度、とっつきやすさは幅広い層の読者を獲得する上で有効的だったと思います。

異世界を演出する上で、豊穣なイマジネーションがちゃんと映像化されてるのもいいと思いますね。

なんじゃこれ?ってなキャラやガジェットがわんさか出てくるんですよね。

これは無条件で楽しい。

難点は、謎掛けや伏線とおぼしき展開がただ思わせぶりなだけで終わってて、どこかに収束するわけでもなく、想像力を喚起するわけでもなかったこと。

意地悪な言い方をするなら、夢オチで終わっても問題ない内容なんですよね。

ミヨリの森がお好きな方は、きっとお気に入りの作品になるんじゃないか、と思うんですけど、私みたいなSFバカにとってはちょっと物足りない、というのが正直なところ。

間口は確実に広がった、と思います。

後はここからどう発展していくか?だと思うんですが、2010年ごろから新作が描かれてないんですよね・・・。

このまま埋もれてしまうには惜しい漫画家だと思うんですが、残された機会はあまりに少ないのが現状なのかもしれません。

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