2012年初出 つばな
太田出版 FXコミックス
同じ学校に通う中学生二人の、説明のつかない共時性を描いたファンタジー。
えー、一応便宜的にファンタジーと書きましたが、厳密にいうと幻想文学的な漫画、といったほうが的確かもしれません。
なんせ「バベルの図書館」ですしね。
ご存じの方も多いでしょうけど、20世紀のラテンアメリカ文学を代表する作家ボルヘスの短編小説「バベルの図書館」をそのままタイトルにしちゃってるわけですから、なんとまあ挑戦的というか、向こう見ずというか。
普通ならタイトルひねってくる、と思うんですよ。
もしくは無関係に思えるタイトルで「バベルの図書館にインスパイアされました」と注釈つけるとか。
ま、作品内容自体、さほどバベルの図書館を引用、参考にしているようにも思えないんで、別に気にするほどのことはないのかもしれませんけど、やっぱりね、例えば「グレート・ギャツビー」ってタイトルの漫画が存在したりしたら、普通に驚くでしょ?って話であってね。
フィッツジェラルドを漫画化したのか?とも思われかねないですし。
そこは作者のセンスの問題かな、と思ったりもするんです。
で、私は有名な小説と同じタイトルを、別内容の漫画に冠する感覚がちょっと理解できない。
それが何を意味してるのかよくわからない、といったほうが正しいかも。
ま、入り口がそんな感じだったんで。
肝心のストーリーも今ひとつ頭に入ってこない状態で。
女子中学生のアンニュイを狂気的な側面と能天気な側面から同時に描こう、としてるのはなんとなくわかるんです。
ただ、それをやることで、キャラクターの多面性が点になり、ひとつの世界として収束しえたのか?というと、決してそうではないわけで。
結局、ハッピーエンドを偽装するかのようなまとめ方で、なんとなくうやむやにしてしまったのが実情かと思うんですね。
仮にもバベルを持ち出してくるなら、さらに想像力を刺激する仕掛けの2つや3つは用意していただきたかった。
不思議な感能力をもつ男子中学生は実在の人物じゃなかった、とかね。
あまりにハッタリがきいてなくて。
辛辣なことを言うようですけど、これ、まだ草稿の状態だと思います。
ここから発展させていかないと、って感じ。
いいから黙って山尾悠子を読め、と思いますね。
私は評価できないですね。
まだ熟す前に刈り取ってしまった一冊、という印象。