リーディングハウス

イスラエル 2017
監督、脚本 ギラッド・エミリオ・シェンカー

リーディングハウス

女性のみで運営される秘密の文学クラブの闇を描いたスリラー。

なぜ女性のみのクラブなのか?というのは、作中で詳しく言及されてないんでよくわからないんですが、その結成の背景には男性優位な社会に対する反発であったり、宗教的な戒律なんかが潜んでそう。

で、このクラブが特殊なのは、会員が定期的に男性を連れてこなければならない、と定められていること。

連れてきた男性が長老のお眼鏡にかなえば、トロフィーをもらえたりする。

逆にさっぱり男性を連れてくることができない会員は、組織内ヒエラルキーの最下層へと押しやられます。

突然「明日から掃除婦!」と申しつけられたりするんですよね。

怖いのは、連れてこられた男性が、クラブから二度と帰ってこれないこと。

わかりやすく描写されてるわけではないんですけど、その末路たるや完全にホラーです。

はっきり言って極悪なカルト集団です、文学クラブ。

うん、見ればわかる。

メンバーの見かけがお上品な淑女であるだけに、そのギャップがね、どこの知略家なレザーフェイス(悪魔のいけにえ)なんだよ!って感じで。

ただ、作品そのものの質感は、スラッシャームービーやサイコホラーとは一線を画していて、ブラックな現代おとぎ話といった体ですんで、その手の毒々しさは皆無。

残虐描写や派手な血飛沫は一切ありません。

主人公は長年クラブに属する壮年の女、ソフィー。

年齢を重ねちゃったものだから、容姿で男を誘惑してクラブへ連れて来れなくなってきてるのが悩みのタネ。

このままではいつか掃除婦へと追いやられてしまう。

かといって退会不可が組織のルールですんで、逃げることもできない。

そこに現れるのが、潜入捜査を申しつけられた刑事。

さて、刑事の存在はソフィーや秘密クラブをどう変えていったのか?が物語の主筋。

なんとなくですけど、スペインのアレックス・デ・ラ・イグレシアが好んで撮りそうな題材だな、と思ったりしましたね。

暗い色調の中にもユーモア色があるんで、女同士の諍いがクスリと笑えたりもするんですけど、私が驚いたのは何故かソフィーのラブロマンスを物語の山場にしようとしていたこと。

いやね、ダメだとは言わないです。

でも、婆さんの恋愛模様をね、誰が好んで見たいか?という話であって。

まさかな、と思ったんですけど、監督は本気でソフィーをヒロインとして扱おうとしている節がある。

なんせイスラエルの映画ですんで。

ナチに蹂躙された過去をもう忘れたのか?と皮肉るようなシーンもあって、きっと風刺劇な落とし所なんだろうな・・と思ってたら「ボニー&クライドか!」ってな展開が待ち受けてたりするもんだから。

なぜ婆さんがボニー?

「救い」を描きたかったのかもしれませんけどね、ソフィー、その両手は長年のクラブへの貢献で血まみれですからね。

救われちゃあ、いかんだろうと。

若くて美しい女性をヒロインにするわけにはいかない理由はよくわかるんですけど、だからといって婆さんに羽目をはずされても困ってしまうわけで。

どう解釈していいのか、悩む映画ですね。

プロットは面白いと思いますし、作劇も悪くないんですけど、気がつきゃあらぬ方向へ地すべりを起こしてた、みたいな印象。

監督はティム・バートンが大好きらしいんですけど、なるほどな、と思う反面、垢抜けなさが恣意的なものなのか地域性なのか、判別つかないのが困った点かと。

しかしイスラエルは個性的な映画が多いですね。

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