韓国/日本 2006
監督、脚本 キム・ギドク

恋人の不実さに業を煮やし、整形を決心した女の行く末を描く恋愛ドラマ。
整形大国韓国ならではの題材か、と思いますが、私が考えていた以上に美容整形が一大事であるかのように描写されていて、あれ?っと首を捻ったり。
韓国じゃあ、成人したお祝いに、親が娘に美容整形をプレゼントしたりするんじゃなかったの?
流言飛語?
劇中では整形外科医が入念に説明責任を果たした上、思いとどまるよう、わざと手術の最中のグロテスクなビデオを見せたりするんですよ。
日本よりハードル高いじゃねえかよ、って。
というか、そこまで親身になって患者のことを気にかける美容外科医は居ない、と私は思うんですけど、どうなんですかね高須先生?
どちらにせよ、この外科医の存在が物語を胡散臭くしてるのは確か。
ほとんどカウンセラーも兼任してるような状態なんですよ。
これは普通に考えて警察沙汰、と思えるような事案に関してまで寛容さを示し、挙げ句には患者の恋人とサシ飲みに出かけたりもする。
韓国の整形事情に詳しくはないですが、これはない、と断言できますね、私は。
職業倫理に照らし合わせるまでもなく、そこまで一人の患者に深くかかわっていちゃあ商売が成立しない。
医療もビジネスですからね。
多分、これはギドクの願望なんでしょう。
整形って、ここまで大変なことなんだよ、と訴えかけたい思いがあったんでしょうね。
詳しく知る人にとってはファンタジーであっても。
で、そうまでして虚構を塗り重ね演出した主人公と女の恋愛事情なんですが、これがねー、なんとも感情移入しにくい二人でして。
まず女の方なんですが、贔屓目に見ても事故物件です。
彼氏が見知らぬ女と話しただけで激しく激高し、相手方には食って掛かったりする。
ベッドの上では突然「私にもう飽きたのね」と言い出し、ふてくされてそっぽを向く。
箱入りのお姫様か、って話だ。
どんだけ恋愛経験値が低いんだよ、って。
男は男でそんな彼女が居なくなるや否やすぐに他の女へ目移りする。
することしときながら、やっぱり俺は元カノが好きだ、とか真顔で言い出す始末。
いやね、勝手にしてくれ、と。
お前らがよりを戻そうが別れようがどうでもいい、と私は中盤ぐらいで興味が失せた。
なので、女が整形して再び元カレの前に現れ、その愛を今度こそ独り占めしようと目論もうが、男がそれにドン引きしておかしくなろうが「まあ、もともと幼稚な恋愛してた連中だし、所詮やることも衝動的で薄っぺらだわな」としか思えないわけで。
終盤はほとんど流し見でしたね。
双方が愛を試そうとするんですけどね、お前らの間にそもそも慈しみ合いはなかったじゃん、愛情乞食なだけでさ、とほとんど対岸の火事状態。
女が面をかぶって出てきたシーンは唯一インパクトがありましたが、それだけでしたね。
そこからなにも発展していかない。
描かれるべきは「女が整形したことによって過去の自分をどう捉え直すのか」だったと思うんですよ。
薄っぺらい信賞必罰なんざヒロイック・ファンタジーにまかせておけばいい。
こじれた痴話喧嘩を収拾つけられないまま投げ出した、安っぽいメロドラマですね。
どうした、ギドク。
実はこの頃、微妙に停滞期だったのでは、と思ったりもする私です。