チャイルド・プラネット

1996年初出 永福一成/竹熊健太郎
小学館ヤングサンデーコミックス 全7巻

大人にだけ感染する致死性の細菌兵器に侵された街で、生き延びる子どもたちの集団を描いたパニックSF。

改めて言及するまでもなく、確信犯的な漂流教室(1972~)のリブートなわけですが、それを踏まえた上で作者は何を描こうとしているのか?が最大の読みどころかと思います。

既視感の強い安っぽさは極力排除されてますね。

胡散臭さや矛盾が生じないよう、細部にまで気を使って物語を構築してるのはよくわかる。

「隙のなさ」は鉄壁に近い。

ドラマ作りも「ややクサいな」と思われる点はあるものの、充分及第点。

大人未満、子供以上のティーンエイジャーの葛藤が、漂流教室ではどうしても描けなかった部分を補完しているようにも感じました。

ただね、絵が若干硬いし、それほど高いテクニックがあるわけじゃない、という点に好みは分かれるかな、という気はします。

違う人が描いてたらもっと劇的になっただろうなあ、と思えるシーンもちらほら。

あとは原作者である竹熊健太郎が6巻でシナリオ担当から降りたことの影響をどう見るか、でしょうね。

竹熊氏の考えるエンディングがどうだったのか、知るすべがないんで比較のしようがないんですが、私の印象では最後の最後でトーンダウンしちゃったような気がしなくもない。

あの終わり方だと、世界に待ち受けているのは「希望」とも「絶望」ともとれるし、また、そのどっちとも言い切れないように思うんですよね。

結果としてこうなったんで、まあ、経過を観察するしかないか・・みたいな場所を着地点とされても、三文科学者の片手間な実験かよ!としか言いようがないわけです。

物語のプロセスが到達点を迎えてないんですよね。

想像してた以上には楽しめたんですが、残念ながら高校生版漂流教室としてのポジショニングは確立できてないように思います。

顔の見えない主人公のパソ通友達、カスパーの存在がきっと重要な役割を担うはずだ、とにらんでたんですけどねえ、それもなんだか尻すぼみでしたし。

せめて横山光輝のマーズ(1976~)みたいなね、吹っ切りの良さというか、やけくそ気味な突き放しがあれば少なくとも伝説になったか、と思うんですが、優等生の無難さで形を保ってるのが実情ですしね。

漂流教室を超えられる漂流教室はない、がこの先も永遠の不文律なのかもしれません。

やっぱり原作者は小池一夫のようなコワモテじゃないと駄目なんだろうな、とふと思ったりもしました。

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