1993年初出 安永航一郎
徳間書店少年キャプテンコミックススペシャル 全4巻

今はなき月刊少年キャプテンに連載されたドタバタギャグ。
さて、安永航一郎というと、私は県立地球防衛軍(1983~)を思い出すんですけど、本当にこの人は全然変わらんなあ、と。
80年代そのままですね。
というか、ラブコメ路線、学園もの路線で少年漫画の世界に新風を吹き込んだ当時の少年サンデーの匂いが依然色濃く漂ってる感じ。
80年代のサンデーといえば細野不二彦であり、高橋留美子、あだちみつるを大黒柱として台頭してきた印象が強いですが、私の感覚では「らしさ」をふりまいてたのは作者であり、中津賢也、楠桂、岡崎つぐお、原秀則あたりだったような気がするんです。
ノスタルジーだけで読めてしまう、というのはありますね。
ただそれも、あの時代を通過してきからこそ共有できる感覚であって。
後追いでいきなり本作に触れて「はまる」ってのはなかなか難しいかもしれません。
上手く言えないんですが、ハイテンションなままひたすら暴走するノリについていけない人もいるかも。
もうね、薬物キメてんのか?と問いたくなるようなアッパーさですしね。
プロットも恐ろしくナンセンス。
阿蘇にあるスポーツ至上主義団体アナボリック・アカデミーに、政府認定の頑丈人間である主人公が潜入して対決していく話なんですけどね、もう現実味とか方向性とか物語の着地点とか、どこにあるのやらさっぱりわからん状態ですしね。
全巻通読してすら、いったいこの漫画はなんだったのか、解説する言葉が見当たりません。
真面目に論評してどうする、とさえ思う。
躁状態のまま一向にバカ騒ぎっぷりが止まらぬ有様は、ギャグ漫画の始祖、赤塚不二夫の天才バカボン(1967~)に近いものがあるなあ、と思ったりもしましたが、しいて難点をあげるなら時事ネタが多いのがよろしくないかも。
若い人は多分わからない。
批判的な意味じゃなしに、リアルタイムで読み捨てていい漫画なのかもしれません。
多分、後の評価とか作者は気にしてないと思う。
時代の瞬間最大風速をねらったギャグ漫画、それがすべてなのかもしれません。
だから今笑えなくても当たり前。
なんだかメモリアルって単語が思い浮かびましたね、うん。
どうでもいいけどタイトルはやはりキューブリックのスパルタカス(1960)から引用してるんですかね?
なんの関連性もない内容っぽいが。