2014年初出 木々津克久
秋田書店チャンピオンコミックス 1~2巻(全7巻)
死んだ兄の幽霊を目の当たりにして以来、この世あらざる存在を知覚するようになった女子高校生、赤木蛍の遭遇する不思議な出来事を描いたオカルトサスペンス。
ああ、作者らしい路線に戻ってきた、と思いましたね。
名探偵マーニー(2012~)を読んだときは、もう木々津克久は少年漫画の人になっちゃうのか、と軽く絶望したものですが、諦めずに待っててよかった。
とはいえ、この作品も少年漫画の文脈であることは間違いないんですけどね。
正直、もっと毒を、と思わなくもないんですが、70年代の少年マガジンじゃないんだからあんまり横紙破りを期待しすぎてもよくないか、と自分を戒めたり。
秀逸なのは、兄の死に事件性があることを匂わせ、その真相を暴くことをシリーズのテーマとしながらも、各話で兄の幽霊と共同作業することにより、怪異に抗していくスタイルをとったこと。
古い話で恐縮なんですが、おお、うしろの百太郎(1973~)みたい!と思ったり。
百太郎ほど強力な力があるわけじゃないんですけどね、兄。
兄になんか技とか超常能力を授けてやれば、より少年漫画らしくなったか、と思うんですが、そっちに舵を切らないのが多分、木々津克久なんでしょう。
赤木蛍が知覚するもの、そのすべてが幽霊じゃなく、概念を具象化したものであったり、人間の深層心理を反映したものであったりするのが「らしい」と思いますね。
そういう意味ではマーニー同様、今回もミステリ色は希薄です。
おそらく作者は純然たるミステリにはあまり興味がないんでしょうね。
それを作家性、味ととらえることができるなら楽しめるんじゃないでしょうか。
ただ、私の場合、縛りを設ければ設けるほど作者はアラが目立ってくる、と感じる部分もあって。
できうることならもっと自由にやらせてあげたい、と思ったりもしてて。
一般誌、青年誌でまたやってほしいんですけどね、とりあえずは静観といったところでしょうか。
しかしなぜこの設定で、赤木蛍の家が大家族なのかが謎だ。
川崎のぼるのてんとう虫の歌(1973~)のリブートなのか?(絶対違う)
最後まで読めばその理由もはっきりするんでしょうかね?