Z ~ゼット~

2012年初出 相原コージ
日本文芸社ニチブンコミックス 全3巻

死んだ人間がゾンビ化する社会に生きる人々をオムニバス形式で描いた連作集。

基本、各話に繋がりはないんですが、女子高生3人組が苦難にさらされながらも生き延びようとするストーリーだけが断続的に続いていて、最終話をその顛末でもって完結とする形になってます。

作者もあとがきで言及してますが、ジョージ・A・ロメロが創造したゾンビ像を下敷きとして物語は成立していて、世界観に目新しさはほぼありません。

この作品ならではの面白さは、ゾンビが徘徊する世界において、どうにか日常を守ろうとする人間の業であり、欲深さであり、哀れさであり、救われなさを独特のペーソスとおかしさで彩ってることでしょうね。

同族殺しも厭わぬ人の醜さをこれでもかと描き、ストーリーを悲劇と絶望で染め上げたゾンビ映画や漫画は大量にあると思うんですが、本作の場合、あえて視線をマクロからご近所目線へと絞った節がある。

それが思わぬ切り口のドラマを演出していたことは間違いない。

なるほど、こういうことも起こりうるか、と膝を打ったエピソードは片手以上。

ペシミスティックというよりは、どこか全体に無常感というかナンセンスな印象がつきまとうのが持ち味と言っていいでしょう。

そこはギャグ漫画で一世を風靡した相原コージならではの独自性でしょうね。

ありきたりに見えて、物語を構成する因子に微妙な違いがあるというか。

少し残念だったのは、期待してたほどには最終話が盛り上がらなかったこと。

大傑作ムジナ(1993~)のような魂の震えるエンディングをファンとしては期待してたんですが、さすがにあんなのは2度と描けないか。

ゾンビ漫画といえばアイアムアヒーロー(2009~)が筆頭に挙げられるかと思うんですが、これはこれで捨てたもんじゃない、そんな風に思いましたね。

映画を見て興味を持った人は読んでみて損はないんじゃないでしょうか。

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