居眠り磐音

2019 日本
監督 本木克英
原作 佐伯泰英

居眠り磐音

ものすごく真っ当な時代劇で実に驚かされましたね。

時代考証や当時の文化、風俗を無視したネオ時代劇ってわけでもなく、桃太郎侍や遠山の金さんに代表されるスターキャラありきの時代劇、というわけでもない。

武家に生まれ、九州の小さな藩に務める武士の、予期せぬ転落と再起にあがく姿を等身大で描いてる。

これほんとに2019年公開作か?といぶかしむほどに渋い内容。

そりゃね、恐るべき剣の使い手であった、というお約束は存在してますよ、でもね、ドラマとチャンバラの比重が7対3ぐらいなんで、とてもるろうに剣心(2012)みたいな老若男女を引きつける求心力はなくてですね。

ともすれば地味。

若い人たちとか、この重厚な悲嘆劇についていけてるんだろうか?心配になってくるほど。

古い時代劇ファンとかは喜びそうですけどね。

ま、制作側もこの内容で真正面から勝負したんじゃ危うい、と踏んだのか、主役に松坂桃李をキャスティングしてご機嫌を伺ってるわけですが、これねえ、私はきわどいラインな気がしなくもないですね。

おそろしいほどさかやき(武士の髪型)が似合わない、ってのもあるんですが、居眠り磐音のタイトルが示す、普段は物腰柔らかな人物だがいざとなるとキレ者、というキャラにあってないように思えて仕方がなかった。

松坂桃李だけが現代人のように見えるんですよね。

これはキャラクターの作り込み不足、演技指導不足な部分もあるのかもしれませんが、ギャップを演出できてないな、と思ったのは確か。

危地において、磐音がまるで別人のような七面六臂の活躍をするからしびれるんであって。

薄らぼんやりとしたキャラのまま同一線上で「剣豪でござい」ってやられてもですね、なんか強いことは強いみたいね、で終わり。

そこに興奮はない。

あと、磐音の悲劇的な過去を描くのに尺を割きすぎて、肝心の本編が連続テレビドラマの第一話みたいな感じになってるのもいただけない。

小粒で盛り上がりに欠ける印象は否めない。

後から調べてみたら、なんと原作は51巻にも及ぶ長編らしく、おそらく映画化されてるのは序盤の1巻分ぐらいなんでしょうけど、そこ、もうちょっとなんとかならなかったものか?と。

ダイジェストみたいになっても問題ですが、磐音と奈緒の行末に決着つけてやる、ぐらいの意気込みで構成したほうがきっとエンディングは感動的だったと思うんですね。

あわよくば続編、と思ってたのかもしれませんけどね。

細密に作られた時代劇だと思いますし、否定的になるほどの材料は見当たりませんが、いくつか足せるものがまだ残ってるでしょ?ってところでしょうか。

余談ですが榎本明が貫禄の怪演を披露してて最後に全部かっさらってました。

それじゃあ駄目なんだ、と監督なり松坂桃李なりが思ってたら次作はきっと化けることでしょう。

次があるなら、の話ですけどね。

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