1993年初出 松本大洋
小学館ビッグコミックス 全3巻
架空の街、宝町を舞台に、ヤクザや警察顔負けの大立ち回りを見せる少年二人組、クロとシロを描いたコミック・ノワール。
松本大洋の代表作とも言われ、今も根強い人気を誇る作品ですが、個性的で精緻な作画のインパクトは色褪せないにせよ、内容そのものに関しては、ああ、90年代だなあ、って感じですね。
というか、私は多分、この世界観に「のれてない」んだと思う。
年端のいかぬクソガキに「俺の街」とか言われてもなあ・・みたいな。
ぶっちゃけ台詞回しがクサい。
あと、知恵と機転で子供が大人顔負けの活躍をする、ってんならまだわかるんですけどね、主人公、物理的&身体能力的に大人より強い、ってどういうことなんだ?と思うわけですよ。
60年代のピストル持った少年探偵かよ、って。
挙げ句に少年の二面性を物語の落とし所とする展開もよくわからない。
怪物じみた少年の内面を描きたかったのなら、宝町という大風呂敷なお膳立ては必要ないし、無用にヤクザや警察を物語に介入させる必要もない。
どこか雰囲気ものっぽい感触がつきまとうんですよね。
アジアの貧民街みたいな無秩序社会で、恵まれぬ境遇をものともしない少年たちを描いてみたい、という衝動だけで成り立ってる気がしますね。
松本大洋という誰にも似ていない漫画家を世に知らしめた功績は認めますが、この人の本領が発揮されるのはもっと後年になってからだと思います。
私にとっては読み返すことのない一作。