2014年初出 イシデ電
エンターブレインビームコミックス 全2巻

家族や夫婦をテーマにした短編の連作集。
特徴的なのは一話完結なのかな?と思わせておいて個別にお話が続いてることですかね。
それぞれのエピソードが交わるわけじゃないんですが、三シリーズか四シリーズぐらいの長編を同時進行で読んでるような感じがあります。
なんとなく業田良家の「自虐の詩」を思い出したり。
形式は同じですね。
画力が高く、ユーモアもあり、ストーリーの組み立て方も上手なんで、退屈することなくサクサク読めるんですが、私が驚いたのはこの絵柄で人の薄汚い部分をえぐり取ったかのような「毒」があること。
特に第一話「ミートチョッパー」なんてもう完全にホラーですよ。
コメディなのかな?と油断してたもんだから、そのギャップにあたしゃ腰を抜かした。
楳図かずおや山岸凉子がこれをやるんならわかるんですけどね、なぜこの絵でこんなにも「黒く」なるんだ、と実に戸惑わされましたね。
女性の嫌な部分、底意地の悪さを描かせたら突出してるかも、と思ったり。
内田春菊を思い出す人もいるかもしれませんね。
なので決して読後感はよくありません。
あー怖い、女って怖いわ、と世の男性諸氏は引いてしまう可能性もなきにしもあらず。
また逆に、だからこそ面白い、とも言える。
これ、最終的に一体どこへ向かうんだろう、と続きを楽しみに読んでたんですが、残念ながら2巻にて打ち切り。
うーん、この屈折度合いというか、あけすけな感じに高い作家性を感じてたんですけどね、コミックビーム読者はもっと気分良く読めるものを望んでいたのかもしれません。
才能ある漫画家だと思いますね。
ここまで作画と内容に落差がある人って、なかなか居ないんじゃないでしょうか。
いつか大河家族ドラマをものにしてほしい、と少し思ったりしました。