THE GUILTY ギルティ

デンマーク 2018
監督 グスタフ・モーラー
脚本 グスタフ・モーラー、エミール・ニゴー・アルバートセン

THE GUILTY ギルティ

捜査現場でのトラブルにより、緊急指令通報室のオペーレーター業務にとばされた主人公の「ある一夜の通報電話」をめぐる攻防を描いたサスペンス。

基本、密室劇です。

主人公は電話応対業務に従事しているために、オペレーター室から外に出ることができません。

そこに見知らぬ女性から「男に拉致され今車で移動している、助けてくれ」との通報が飛び込んでくる。

本来なら所轄警察に回して終わる案件なんですが、主人公はもともと刑事なものだから血が騒いじゃうんですな。

捜査を担当する北部司令室の対応もなんだか気に食わない。

そうこうしてる内に再び電話がなる。

主人公は電話のやりとりだけで女性を救うことができるのか?がこの映画の見どころなんですが、はっきり言おう、大傑作です。

いやね、過去にも似たような感じで「縛り」を設けた作品はあったように思うんですが、不自由さがそのまま面白さにつながるか?というとなかなか難しいものがあるように私は思うんですよ。

低予算であるがゆえの工夫がスリルに直結するためには、シナリオなり演出なりが頭抜けてないと予算が潤沢な大作映画にはなかなか太刀打ちできない。

それこそ「やりたかったことはわかるんだけどね」で終わっちゃう。

きっとそれなりの出来なんだろうな、悪くはないけど良くもないみたいな、と見る前から斜に構えてたりなんかもしたんですが、ところがどうして開始30分で居住まいを正されましたね、私は。

なんといっても圧倒的に演出がうまい、このグスタフ・モーラーって人は。

絵的に変化のない密室で、どうフックを設けるかをきちんと考えてカメラを回してる。

特に私が感心したのは元上司とのやり取りのあとのシーンで。

「出ていったんで」

カメラが手元へと移動。

そして薬指の指輪をアップ。

なんだこれ、主人公の心情もなにもかも全部説明してるじゃねえかよ、と脱帽。

シナリオの出来も尋常ならざる優秀さ。

電話の声だけですべてを観客に想像させるためのピースが1枚たりとも抜け落ちてないだけでなく、事件そのものに主人公が抱えている「トラブル」を照らし合わせるという荒業を成し遂げてる。

事件の解決自体が、主人公の生き方を問う仕掛けになってるんですね。

だからタイトルはTHE GUILTY(罪)。

それでいて、知り得た情報がすべてじゃないとばかり、最後にはどんでん返しが待ち受けていたりもする。

鮮やか、とはまさにこのこと。

エンディングがこれまた秀逸で。

詳しくは書かないですが、想像を掻き立てられる余韻がお見事というほかない。

文句なし、一級品のサスペンスだと思いますね。

ジェイク・ギレンホール主演でハリウッド・リメイクが決定してるらしいですが、これを超えるのは相当な難事業だと思います。

動けないジレンマをスリルに転化し、内面の葛藤をも心理劇として成就させた密室ドラマの名作と太鼓判を押す次第。

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