スペイン/アメリカ 2017
監督、脚本 セルヒオ・G・サンチェス
アメリカ郊外の家に越してきた母子5人の謎めいた暮らしを描いたサスペンス。
監督は永遠のこどもたち(2007)の脚本家、セルヒオ・G・サンチェス。
さらに製作総指揮が J・A・バヨナ ときては、期待するな、という方が無理というもの。
初監督作品とは思えぬ手慣れた印象は受けました。
陰影の濃い映像作りも、ともすればホラーかと思わせるような怖さがあって良。
ま、前半のシナリオ展開はほとんどホラーだったりはするんですけどね。
自然光にこだわって撮ってるんだと思うんですが、脚本家上がりがそこまで気を使えれば上等だと思います。
テンポよくお話が進んでいくのもいい。
いったい家族は何に怯え、何から身を隠すように隠遁生活を送っているのか、謎だらけの不可解さを散りばめた序盤の「引き」も上手。
はたして怪異なのか、それとも特定の誰かなのか、その対象が、まるでわからないのが見る側を前のめりにさせるといいますか。
こりゃ名作「永遠のこどもたち」に肉薄するか、と途中までは思ってたんですよ。
ところがだ。
何を思ったのかサンチェス、物語中盤で種明かしをするというわけのわからない大失態をやらかします。
いや、意図することを汲み取れなくはないんですよ。
本当のオチはこれじゃないんだ、ときっと本人は主張することでしょう。
でもねえ、中盤に決定的な事実を突きつけることで、この映画がホラーなのかサスペンスなのかはっきりしちゃうし、そこからもう一度サスペンスとしての緊張感を高めていく労苦をわざわざ自分から背負い込んじゃうのは決して得策ではない、と思うんですよね、私は。
最後までホラーとしての体裁を崩さずに、あのオチだったから「永遠のこどもたち」はすごかったわけで。
やるなら二段オチにすべきだった、と私は思いますね。
最後の最後に家族が怯えていたものの正体を明かし、なおかつ同時に長男は何を見ていたのかを明かすことはそれほど難しい作業ではなかったんじゃないか?と思うんですよ。
なにをもって観客を欺くのか、山場となる場面の重要度を見極められてないですね。
よくあるネタだ、と思ったのはきっと私だけではないでしょう。
それもね、二段オチなら回避できたはずなんですよ。
シナリオ構成の失敗、それに尽きますね。
本職のはずなのに、どうしたんだサンチェス。
映画そのものの出来は悪くないだけに残念。
機会があれば別作品で仕切り直しを。