2016年初出 三浦秀雄
双葉社アクションコミックス 1~2巻(以降続刊)
人間の代わりに戦うことを目的に産み出された人造人間の悲劇を描く戦場SF。
ニコニコ静画で発表されていたものを双葉社が単行本化。
現在は描き下ろしで巻数を重ねてるんですかね?掲載誌を調べたんですがわからなかった。
ちなみに紙の本で発売されてるのは3巻までです。
4巻以降は電子書籍。
ま、プロットそのものはディストピアSFとして割とありがちかな、とは思います。
人造人間たちが差別迫害される立場にあったり、40年しか寿命がなかったり、街が化学兵器で汚染されてて人間が暮らせなかったり。
おそらく作者がやりたいのは、社会の最下層にある人間もどきたちが再活性化と呼ばれる寿命延長施術を受けるために、戦場へと命を投げ出す無残さを呵責なく描写することなんだろうな、と思います。
これ、格差社会化が加速していく現実を反映している、と捉えられなくもない。
ただ、そこに共感できないと、暗く希望のないシナリオ展開にちょっと疲れてくるかもしれません。
なんだか戦争映画を見てるような気分になってくるんですよね。
これ、別にSFじゃなくても良かったんじゃないか?と私は思ったりする。
身分差別と戦場さえあればこの漫画、成り立っちゃいますし。
やっぱりね、前提に無理があると思うんです。
人間とほぼ同じ能力、外見を持ち、毒にも耐性のある生命体って、1体作り上げるのにどれほどのコストがかかるんだよ、って話で。
代わりに戦争させるのはいいけど、それ、ミサイルより安くて経済的なのか?って。
倫理観が欠落しちゃってるのも気になる。
いうなればほぼクローンなんですよ、作中の人造人間って。
そんなのを大量生産して使役することに禁忌を抱かない社会って、ちょっと想像がつかないんですよね、モラル崩壊しすぎてて。
希少性と畏怖を併せ持って少数が存在するならわかるんですけど、大量生産、大量消費って、どういう歴史をたどればそうなるんだ?と。
線の硬いさそうあきらみたいな作画も気になる。
どうしても地味に見えるというか。
ドラマ作りは上手だと思うんですけどね、シチュエーションSFみたいな世界観と、戦場の悲哀を描くことにこだわった作風が私はちょっとしんどかったですね。
ミリタリーものとかお好きな方ははまるかもしれませんが。
この題材でアニメっぽい媚がなく、無骨で泥臭いのは評価したいと思いますけど。