2015年初出 百名哲
エンターブレインハルタコミックス 1巻(全2巻)

タイトルそのまま、モキュメンタリーを漫画でやらかしたシリーズ。
さてモキュメンタリーというとフジテレビのドラマ、放送禁止(2003~)なんかが有名ですが、知らない人のために解説すると、フェイク+ドキュメンタリーがその語源。
事実をそのまま撮っているように見せかけながら実は創作である、というのがミソ。
それを漫画に転用してるわけですが、形式としては作者本人が体験したことをエッセイ風につづりながらも実際にあったことじゃないですよ、作ってますよ、というのが作品のスタンスとなるわけです。
おお、これはありそうでなかった試みだな、と私は思いましたね。
もはやジャンル化しつつある素人エッセイ漫画界に一石を投じる存在になるかもしれない、と。
そんな意図は端からないかもしれないですけどね。
で、これがですね、思ってた以上によく出来てる。
エッセイならではの親しみやすさはもとより、創作とわかっていながらも「本当にあったことなのではないか?」と思わせる説得力が各話にあるんですよね。
特に私が驚かされたのは「Tig****はWEB上から消えた」と「走れメロス」。
事実は小説よりも奇なり、とはよく言いますが、それを地で行く出来栄えというか。
さじ加減が絶妙なんですよね。
エンターティメントにおける仰天のオチじゃないんです。
「もしかしたらあったかもしれない」と思わせる、信憑性を損なわない驚きの顛末が最後には待ち受けてる。
特に後者なんて軽く感動してしまうほど。
虚実ないまぜにフェイクを現実に溶け込ませる手管があまりに鮮やかすぎる。
画力があまり高くないのが残念といえば残念なんですが、これだけのことができるならもう絵なんて記号でいいよ、と思えてくるんだから漫画ってのは不思議だ。
私が読んだのは1巻だけなんですが、これ、続けられるのかと不安になってくるほどの完成度でしたね。
こりゃ先が楽しみだ、と思ってたんですよ。
そしたらだ。
2巻にて完結のアナウンス・・・。
うーん、人気でなかったのか?
マジで?
面白いと思うんだけどなあ。
なにか事情があるのかも知れませんけど、こういう事ができる人には末永く漫画描いてほしいですね。
他の諸作を漁ってみよう、と思う昨今でございます。