2000年初出 熊倉隆敏
講談社アフタヌーンKC 1~8巻(全9巻)
霊媒体質の姉妹の日常と地域社会の関わりを描く一風変わったオカルトファンタジー。
人とは違った体質に悩む姉妹が、拝み屋で民俗学にも精通した祖父の助言を得て、少しづつ周りに馴染んでいく成長物語でもあるわけですが、この作品が特異なのは、水木しげる路線を伝奇的、学術的に思弁しようとする傾向にあることでしょうね。
幽霊とかほとんど出てこないんです。
一話完結形式で各話のタイトルとなっているのは全部妖怪の名前。
クダンとか一つ目小僧みたいなのがバンバン出てくるんですけど、それが一切子供だましにならず、胡散臭くもならないというのは大したものだと思いますね。
おそらく相当な分量の資料なり、文献を作者は読み漁ってる、と思います。
姉を見鬼、妹を憑童とみなすあたりからしてその知識量は推して知るべし。
見えざるもの、常識で測れぬものをどう解釈していくのか、不可思議を紐解いていくプロセスがやたらと面白いんですよね。
そこはポップな諸星大二郎、と言ってもいいかも知れない。
アニメ化されたのも納得の出来。
ただ、この作品「姉妹と異形との関わり」から次のステージへと進む気配が全くないのが玉に瑕でして。
もう、延々異形とすったもんだして、悩んでるだけなんです。
なにも世界を救う必要はないんですけどね、進むべき道なり、人とは違うからこそたどり着ける境地なりを論考、示唆してくれないと、堂々巡りなままどこへもいけないわけで。
特にお姉ちゃんとか、悩んだところでどうにもならんことを延々気に病んでて、読んでてだんだんしんどくなってくる。
ちょっと他にない切り口の「怪異が同居するホームドラマ」として、その質は高いと思うんですが、物語そのものがなんとなく日常の積み重ねだけで終わっちゃったかな、と。
お母さんの存在とか、起爆剤になりそうだったんですけどね、何も起こらなかったですね。
最終巻に辿り着く前に私は頓挫しちゃったんで断言はできないですが、面白いんだけどどこかとどいてない作品、というのが正直な感想でしょうか。