天国でまた会おう

フランス 2017
監督 アルベール・デュポンテル
原作 ピエール・ルメートル

天国でまた会おう

第一次世界大戦で顔半分を吹き飛ばされた男と、その戦友の巨額詐欺計画を描いた作品。

クライム・サスペンスみたいな感じなのかな?と先入観を抱きがちですが、どっちかというと戦争の傷跡を持て余す二人の、友情と確執相半ばする物語、って感じですね。

詐欺計画を成功させるためのスリリングな演出とか、あんまり重点が置かれてない。

むしろ顔を失い、日常生活において仮面をかぶらざるを得なくなった帰還兵エドゥアールの数奇なドラマ、といったほうが正しい。

で、この作品が微妙にしくじってるのはエドゥアールに焦点を絞らず、あちこち脇見をしながらストーリーを進行させていることにありまして。

極端なことを言うなら、エドゥアールとその戦友アルベールの関係性だけで一気に最後まで見せきっても充分映画としては成立したと思うんですよ。

私なんかアルベールですら狂言回しでよかったんじゃないか?と思ったほど。

なのに監督はそこに、横暴な上官プラデルとの戦後も途絶えぬ反目や、エドゥアールの姉との関わり、アルベールの恋物語、謎の少女ルイーズの介入などを盛り込み、それをアルベールの独白で振り返る形によって物語の舵取りとする。

入り組みすぎ、なんですよね。

それぞれのエピソードはそれなりに面白いんですけどね、やっぱりたった117分でこれ全部描ききるのは無理があるでしょう、と。

おそらく原作に忠実たらん、としたんだと思います。

けれどそれが結果的に「拾いきれぬものを大量に置き去りにしていく」事態を招いちゃってる。

作中の出来事それぞれに、裏付けや背景、前後関係がちゃんと見えてこないんですよね。

乗車率120%の満員列車ですし詰めになりながら、身動き一つ取れぬまま終着駅まで運ばれたような感じというか。

せっかく仮面の男という魅力的なキャラを創出してるのにそれがあんまり生かされてないんです。

これね、エドゥアールと父親の親子関係を描くだけで充分だったと私は思うんですよね。

私なんざオペラ座の怪人か、はたまた90年代のティム・バートンみたいな方向に進むものだとばかり思ってたものだから。

アルベールがどうなろうと別にどうでもいい、って話なわけですよ、ひどいこと書いてるけど。

映像化に際して、取捨選択を失敗してる、ってのが実情ではないでしょうか。

原作のピエール・ルメートルが脚本にも噛んでますんで、思うようにはいかなかった部分もあったのかもしれませんけどね、このシナリオを不備なく映画にしたいなら前後篇240分ぐらいのヴォリュームは必要だった、と思う次第。

もっとドラマチックになったはずだと思うんですけどね、残念。

ほのかな救いのあるラストシーンとか、目を引く美術や仮面の造形等、良いなと思える点もいくつかあるんですが、とっ散らかってる印象はどうにも拭えない一作でしたね。

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